マンションの大規模修繕の費用相場はどのくらい?
マンションでは、定期的に大規模修繕を行なうのが一般的です。
しかし大規模修繕には多くの費用がかかるので、価格相場をしっかりと把握しながら計画を立てる必要があります。
そこで今回は、大規模修繕工事の費用・価格相場について解説していきます。
「少しでも大規模修繕の費用を抑えたい」というかたは、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
大規模修繕の目的
劣化した外壁や屋上防水などを修繕する大規模修繕。
大規模修繕を行なうと、マンションを快適かつ安全に使えるようになります。
マンションの寿命を延ばし、資産価値を高めることにも繋がりますよ。
マンションの劣化度合いや予算によっても異なりますが、大規模修繕は16年前後に1度行なうのが一般的です。
大規模修繕の工事内容
大規模修繕では、以下の箇所を修繕するのが一般的です。
・外壁
・給排水管
・ベランダ
・玄関ドア
・シーリング
・屋上防水層
マンションの周囲に足場を設置する仮設工事から始まり、下地補修工事やタイル補修工事、塗装工事など、さまざまな工事を総合的に行ないます。
大規模修繕の費用・価格相場
平成29年の国土交通省の調査によると、多くの大規模修繕では2,000~4,000万円の費用がかかっています。
1戸あたりだと100万円ほどの費用がかかるのが一般的です。
ただし豪華なエントランスやフィットネスジムなど設備が充実しているタワーマンションの場合は、1戸あたり150~200万円ほどの費用がかかるケースも多いですよ。
また費用の内訳は以下のとおりです。
外壁関連 |
24% |
防水関連 |
22% |
仮設工事(足場の設置など) |
19% |
給水設備 |
7% |
鉄部等の塗装 |
5% |
外壁や防水、仮設工事に多くの費用が費やされるのがお分かり頂けたと思います。
ちなみに第三者であるコンサルタントに現場管理や工事計画を依頼する場合は(設計監理方式)、総額の5~10%の費用がかかります。
またマンションの劣化具合を詳細に検査する「建物診断」には、小規模マンションで20万円前後、大規模マンションで50~100万円ほどの費用が発生するのも覚えておきましょう。
工事別の費用相場
ここではさらに、工事別の費用相場についてご紹介していきます。
業者の見積もりが適正価格かどうかを判断するために、ぜひ参考にしてみてください。
劣化診断の費用相場
修繕が必要な場所を見極めるために必要な劣化診断。
規模の大きいマンションでは特に欠かせません。
30戸以下のマンションなら15~40万円、100戸程度のマンションの場合は30~80万円、200戸以上のマンションでは50~100万円ほどはかかるでしょう。
ちなみに簡易的な劣化診断の場合は、施工業者に無料で行なってもらえることもありますよ。
足場工事の費用相場
大規模修繕を行なうにあたって、初めに行なう足場工事。
マンションの周囲を金属製の足場で囲って、外壁工事を行ないやすくします。
足場工事には1㎡あたり600~1,500円ほどの費用がかかります。
補修工事の費用相場
外壁のひび割れを補修したり、剥がれたタイルを貼り直したりするのが補修工事です。
補修工事には、1㎡あたり1,500~6,500円ほどの費用がかかるでしょう。
外壁塗装工事の費用相場
外壁塗装工事には、1㎡あたり3,000~7,000円ほどの費用がかかります。
また塗料のグレードによっても費用は変動します。
例えばシリコン塗料は1㎡あたりの費用が2,300~3,500円、フッ素塗料の場合は3,500~4,800円ほどかかります。
給排水設備工事の費用相場
戸数によっても異なりますが、給排水設備の工事は1棟あたり70~200万円ほどの費用がかかります。
現時点では不具合がなかったとしても、交換時期(約20年に1度)が来たら交換しておくと良いでしょう。
屋上防水工事の費用相場
マンションを雨漏りから守る防水工事。
屋上やバルコニー、共有部分の廊下などに防水工事を行ないます。
防水工事は工法ごとに費用が異なります。
例えばビニールシートを使った「シート防水」は3,500~6,500円、ウレタン樹脂を使った「ウレタン防水」は3,500~6,000円程度の費用がかかります。
玄関ドアリフォームの費用相場
玄関ドアの鉄部の塗装には、1㎡あたり1,000~3,000円の費用がかかります。
またドア表面の塗装に3~8万円はかかるでしょう。
ドア自体を交換すると、20~35万円の費用がかかりますよ。
諸費用の相場
大規模修繕では、産業廃棄物処分費用なども発生します。
現場事務所仮設費用は10~20万円、産業廃棄物処分費用は10~70万円、安全対策費用には20~50万円ほどの費用がかかるでしょう。
修繕積立金の目安は?
修繕積立金とは、大規模修繕工事のために使われる費用のこと。
マンション住人から毎月徴収しておき、大規模修繕に備えます。
国土交通省の調査によると、マンションの修繕積立金の平均額は11,243円です。(平成30年度)
面積で計算すると、1㎡あたり200円の修繕積立金が一般的です。
例えば60㎡の部屋の場合、12,000円ほどのが適正額ですよ。
ちなみに築年数が浅いマンションのほうが、修繕積立金の額は安いです。
これは入居率を上げる目的で、販売会社が月額負担を軽く見せるために行なっています。
大規模修繕の流れ
大規模修繕は次のような流れで行なわれます。
①体制づくり
②調査
③計画
④業者の選定
⑤着工
⑥竣工検査
①体制づくり
まずは管理組合内に、大規模修繕に向けて修繕委員会などを設置します。
監理を依頼する設計事務所やコンサルタントなど、外部のパートナー(専門家)との契約も必要です。
②調査
次に建物診断を行ない、マンションの劣化箇所を調査していきます。
マンション住人へのアンケートも行ない、建物の問題点などを洗い出します。
③計画
実際にどんな工事を行なうのかを、建築診断の内容や資金計画などと照らし合わせながら決めていきます。
費用が足りない場合は一時金の徴収や、金融機関からの融資も検討します。
④業者の選定
実際に工事を行なう業者を選びます。
インターネットや専門誌などを使って公募し、書類面接で候補を数社に絞ります。
その後はプレゼンやヒアリングを通して、どの業者と契約するかを選びます。
業者が決まったら、総会で組合員の承認を得て、はじめて正式に工事の発注が可能となります。
⑤着工
ここでようやく工事が始まります。
工事中も、きちんと仕様通りに工事が進んでいるかをチェックすることが大切です。
工事中に問題が発生した場合は、パートナーが管理組合へ報告し、どう対処するかを組合内で協議します。
工事では騒音や臭いなども発生するので、マンション住人や周辺住民に理解を促すことも大切です。
⑥竣工検査
工事が一通り終わったら足場を撤去する前に、きちんと工事が行なわれたのか検査します。
問題がなければ工事完了です。
工事が終わった後は、今後どうやってマンションを維持管理していくのかを検討し、次回の大規模修繕に備えることも大切ですよ。
大規模修繕の費用を抑えるには
ここでは大規模修繕の費用を抑える方法をご紹介していきます。
といっても必要以上に費用を抑えてしまうと必要な工事ができなくなる場合があるので、あくまでも適正価格で行なうことを心がけましょう。
管理会社任せにしない
管理会社が見積もりを依頼した施工会社と、管理会社が裏で繋がっているケースも多いです。
工事価格が高くなる傾向があるので、管理組合側で施工会社を比較検討して、信頼できるパートナーを見つけることをお勧めします。
工事内容を見直す
見積もり金額が予算を超えてしまった場合は特に、工事内容を見直すことが必要です。
建物の維持に直接関わらない工事は、次回の大規模修繕に延期することも可能です。
大規模修繕後に費用が貯まり次第、別途で工事したりもできますよ。
工事時期を見極める
大規模修繕を行なう前に、新築または前回の大規模修繕から10年ほど経過したら建物診断を行なうのが良いでしょう。
想像以上に劣化している箇所が見つかる場合もあります。
劣化した箇所から、さらに劣化が広がるパターンが多いので放置してはいけません。
早めに修繕しておいたほうが、結果的に費用の節約に繋がりますよ。
まとめ
今回の記事の内容を、簡単にまとめていきます。
・大規模修繕を行なうと、マンションの寿命が延ばせる
・16年前後に1度行なうのが一般的
・外壁や給排水管、屋上防水層などの補修を行なう
・2,000~4,000万円の費用がかかる
・1戸あたり100万円が平均
・工事別にそれぞれ費用相場がある
・修繕積立金の平均額は11,243円
・大規模修繕では一定の流れがある
・費用を抑えるには施工会社の適切な選定や、工事内容・工事時期の見直しが必要
マンションの大規模修繕では1,000万円単位で費用がかかるケースが多いです。
信頼できる施工業者や必要な工事内容を見極めて、ぜひ大規模修繕を成功させてみてくださいね。