屋根塗装や外壁塗装には「ケレン」という工程があります。
聞き馴染みのない言葉ですよね。
しかし、塗装工事においてケレンは重要な作業の一つです。
どれくらい重要なのでしょうか?
この記事では、塗装前の必須工程であるケレンを行う目的や、外せない理由、効果などを詳しく解説していきます。
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目次
ケレンとは?素地調整の目的・重要性・効果
ケレンとは、塗装の前に行う素地調整のことです。
電気工具ややすり、ワイヤーブラシなどを使用して、塗装面についた古い塗膜やサビを除去する作業です。
この「ケレン」という言葉は、英語の「clean(クリーン)」が訛って「ケレン」になったとも言われています。
ケレンには他にも呼び方があり、以下はその他の呼び方です。
- ケレン作業
- さび落とし
- 下地処理(下地調整)
- 素地調整
- 素地ごしらえ
- 目粗し(目荒らし)
- 研磨紙刷り
いずれの言葉も塗装面をきれいに整える作業を指します。
古い塗膜やサビを除去する以外にも、塗料の密着性を高めるために、塗装面にあえて傷をつける作業もケレンと呼ぶことがあるそうです。
下記ではケレンを行う目的と重要性、その効果を解説します。
ケレンを行う目的・重要性
ケレンを行う目的は以下のとおりです。
- 塗料の密着性・付着性を向上させる
- 塗料の効果を長持ちさせる
- 仕上がりを良くする
塗料の密着性・付着性を向上させる
ケレンを行う目的の一つは、下地(塗装面)と塗料の密着性・付着性を高めるためです。
塗装は、サビや汚れなどのダメージから建物を保護するために施すので、塗料と下地を密着させる必要があります。
しかし、下地にサビや汚れ、そして古い塗膜が残っていると、それらが付着の邪魔をするため、いくら塗料を塗り重ねても剥がれやすい塗膜になってしまいます。
そこで、ケレンでサビや汚れを除去し、塗料と下地が密着しやすい状態に調整します。
下地がツルツルしている場合は、目の粗いやすりなどであえて細かい傷をつけ、凹凸を作る作業を行います。
細かい傷をつけ、アンカー効果を作り出す作業もケレンの一種です。
この調整作業を省いたり、雑に行ってしまうと脆弱な塗膜に仕上がってしまいます。
しっかりとした塗膜を作る上で、ケレンは重要な作業の一つです。
塗料の効果を長持ちさせる
ケレンで塗料と下地を密着させることで、剥がれにくい塗膜になるだけではなく、塗料の効果も長続きします。
塗装工事は劣化の進行を防ぐことも目的の一つです。
下地にサビや汚れがある状態で塗装しても、表面上はきれいになりますが、根本の解決には至っていません。
特にサビは上から塗装しても、どんどん広がっていきます。
下地の劣化に比例して新しい塗膜も劣化し、すぐに剥がれ落ちるので、塗料は防錆や遮熱といった本来の効果を発揮しません。
せっかく塗装工事を行っても、近いうちに、再塗装工事が必要になるでしょう。
余計な出費を避けるためにも、ケレンでサビや汚れをしっかり落とすことが重要です。
そうすることで、塗料本来の効果が長続きします。
仕上がりを良くする
塗料の厚みはどれくらいなのかご存知ですか?
標準的な塗装工事では0.5mm以下です。とても薄いですね。
それだけの厚みしかないため、ケレンを行わずに塗装してしまうと、サビ・コケなどの異物の輪郭が浮き彫りになり、凸凹の表面になってしまいます。
塗り重ねをしたとしてもムラはできるため、きれいな仕上がりにはなりません。
ケレンの効果
ケレンの効果は塗料の寿命を長持ちさせることです。
では、ケレンを行った場合と行わない場合、どれくらいの差があるのでしょう?
関西鋼構造物塗装研究会がケレン作業と塗料の寿命の関係性を調査しました。
以下の図は調査結果をまとめたものです。
この図が示すとおり、塗料の寿命に与える影響のうち、ケレン作業が約50%も占めています。
次いで、「塗り回数」が約20%、「塗料の種類」が約5%という結果でした。
塗料の寿命を長持ちさせる上で、ケレン作業がいかに重要な作業なのかがわかりますね。
ケレンの種類と単価相場
ケレン作業を理解することは、適切な塗装計画を立てる上で非常に重要です。
そして、1種から4種まであるケレンの種類ごとに特徴と単価相場が異なります。
ここでは、それぞれのケレンの種類とその単価相場を紹介します。
1種ケレン
1種ケレンは、ブラスト法や剥離剤を使用し、塗装面の古い塗膜やサビを徹底的に除去する最も強力な下地処理方法です。
特に重度の劣化が見られる場合に適しています。
単価相場は1平方メートルあたり約3,000円から4,000円です。
2種ケレン
2種ケレンは、ディスクサンダーやパワーブラシなどの電動工具を使用して、塗装面のサビや古い塗膜を完全に除去する作業です。
塗装面の30%以上がサビている場合や、異なる種類の塗料を使用する際に行われます。
単価相場は1平方メートルあたり約3,000円から4,000円です。
3種ケレン
3種ケレンは、ディスクサンダーやワイヤーブラシを使い、サビや古い塗膜を部分的に除去する中程度の下地処理です。
完全な除去ではなく、塗装の密着を促進するために必要な範囲で行います。
特に、古い塗膜を一部残す場合に適しており、塗装前の適切な下地作りに役立ちます。
単価相場は1平方メートルあたり約2,000円から3,000円程度です。
4種ケレン
4種ケレンは、紙ヤスリや研磨スポンジを使用して塗装面全体を軽く擦り、表面の微細な凹凸を整える最も軽度の下地処理です。
この方法は、塗料の密着を促進するために、塗装面をわずかに荒らす目的で行われます。
特に新しい塗装や軽微なメンテナンスが必要な場合に適しています。
単価相場は1平方メートルあたり約200円から500円程度です。
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外壁塗装や屋根塗装でケレンを行うタイミング
ケレンは、高圧洗浄機で外壁や屋根の汚れを除去したあとに行います。
施工面のサビ・汚れを隅々までケレンで除去したら塗装に入ります。
ケレン作業は乾燥した日に行うのが理想だとされています。
湿度が高いとケレン後の表面が乾きにくいからです。
下地に水分が残ったまま塗装を行ってしまうと、塗膜の膨れやひび割れなどが生じやすくなります。
ケレンの必要性と金属が錆びる原因
ケレンの必要性と金属が錆びる原因を理解するには、「さびの形成過程における水分や腐食性イオンの影響」と「水中での鉄の腐食プロセス」を知ることです。
以下でこれらの要因を詳しく解説します。
さびの形成過程における水分や腐食性イオンの影響
水分や腐食性イオンは、金属の錆形成における主要因です。
これらが金属表面で化学反応を促進し、酸化を通じて錆を生成します。
特に、水分は酸化反応を速め、金属のイオン化傾向に基づいて錆進行の速度を変えます。
ケレン作業によりこれらの要因を取り除くことで、金属表面がクリーンになり、酸化反応が抑制されます。
結果として、錆の形成が防がれ、塗装が直接金属に密着するため、塗装の寿命が延びるのです。
水中での鉄の腐食プロセス
鉄が水滴に触れると、イオン化傾向の高さから酸素と反応し、酸化物を生成して錆へと変化します。
この過程は、鉄のプラスイオンと酸素のマイナスイオンが良好に結合する化学的相性によるものです。
ケレン作業により、錆や旧塗膜を除去し、塗装の密着性を向上させることで、鉄表面を保護し錆の形成を防ぎ、金属の耐久性を高められます。
まとめ
ケレン作業についての解説をしてきました。
まとめると、
- ケレン作業は、塗料の密着性と付着性を向上させることを目的としており、塗装の効果を長持ちさせるために重要
- 異なる種類のケレンが存在し、それぞれに適した使用場面と単価相場があります。適切なケレン方法の選択は、塗装の品質を左右する。
- ケレンの必要性は、金属が錆びる原因と密接に関連しており、水分や腐食性イオンの影響によるさびの形成過程を防ぐために行われる。
ケレン作業を適切に行うことで、塗装の品質と耐久性を高め、建物の美観と機能性を長期にわたって保つことができます。
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