屋上と外壁の防水工事を同時に行うメリットとは?費用相場・工法・業者選びを解説
2025/08/21
建物の寿命を守るために欠かせない工事が「防水工事」です。
特に屋上と外壁は、常に雨風や紫外線を直接受ける部分であり、もっとも劣化の影響を受けやすい箇所といえます。
劣化を放置すれば雨漏りが発生し、建物内部の鉄筋や木材にまで影響が及び、耐震性や安全性が著しく低下します。
多くの方は「屋上だけの工事で十分では?」あるいは「外壁だけを塗装すれば安心」と考えがちですが、実際には屋上と外壁の防水工事を同時に行うことで得られるメリットは非常に大きいのです。
本記事では、屋上と外壁の防水工事の必要性を改めて確認しながら、同時に施工することでどのようなメリットがあるのかをわかりやすく解説します。
また、工事方法の種類や費用相場・施工の流れや業者の選び方についても具体的に触れていきます。
防水工事を検討している方が、適切な判断を下せるように整理した内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
屋上と外壁の防水工事はなぜ必要なのか
屋上や外壁の防水工事は、見た目をきれいに整えるためだけではなく、建物そのものの機能を守り、長寿命化を図るために欠かせない工事です。
防水対策を怠った場合、わずかなひび割れからも雨水が浸入し、鉄筋コンクリートの劣化や木材の腐食を引き起こします。
最終的には大規模な修繕や建物全体の資産価値の低下につながり、住まいやオフィス環境に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、屋上と外壁それぞれにおける防水工事の必要性を掘り下げます。
屋上防水が必要な理由
屋上は平らな形状であることが多く、雨水が自然に流れにくい構造になっています。
防水層が劣化してひび割れや剥がれが生じると、水が溜まりやすく、そこから建物内部に雨水が浸入してしまいます。
一度浸入した水は内部の鉄筋を錆びさせ、膨張によりコンクリートをひび割れさせる「鉄筋爆裂」などを引き起こします。
これが進行すると修繕規模が拡大し、コストも跳ね上がってしまいます。
定期的に防水工事を行うことで、こうした被害を未然に防ぎ、建物の耐久性を維持することが可能です。
また、屋上は共用スペースや設備機器の設置場所としても利用されるため、雨漏り対策を怠ると設備トラブルのリスクも高まります。
外壁防水が必要な理由
外壁は一見すると頑丈に見えますが、実際には日射や降雨の影響を直接受けており、塗膜の劣化が進行すると目に見えない小さなひび割れが発生します。
この隙間から雨水が侵入すれば、室内の雨漏り被害に直結するのです。
多くの人が「外壁塗装をしているから安心」と考えがちですが、塗装と防水工事は目的が異なります。
外壁塗装は主に美観維持や外壁材の保護を目的とし、防水性を補助する役割しかありません。
一方、防水工事は雨水の浸入を物理的に防ぐために専用の材料や工法を用います。
特にコーキング材の打ち替えや、弾性塗料の使用などが代表例です。
外壁の防水工事を行うことで、建物全体の安全性と快適な居住環境を長く保てるのです。
屋上と外壁の防水工事を同時に行うメリット
屋上と外壁の防水工事は、別々に施工するよりも同時に施工するほうが合理的であり、費用や工期の面でも大きなメリットがあります。
ここでは、その具体的な利点を一つずつ掘り下げます。
工期を短縮できる
防水工事では、足場設置や作業スペースの確保が必須です。
屋上と外壁を個別に施工すると、それぞれで工事日程を組まなければならず、工期が長期化します。
しかし同時施工を選べば、足場の設置が一度で済み、作業効率が格段に向上します。
これにより、居住者の日常生活やオフィスの業務への影響を最小限に抑えられます。
特にマンションやビルでは居住者への告知や調整も必要になるため、工期短縮は大きな安心材料となります。
足場費用を含めコスト削減できる
高所での工事に欠かせない足場の設置には、通常数十万円から数百万円の費用がかかります。
別々に工事を行えば、その都度足場を組む必要があり、コストは二重に発生します。
屋上と外壁を同時に施工することで足場は一度で済み、結果的に大幅なコスト削減につながります。
さらに、足場の設置・解体には時間もかかるため、作業全体の効率化にも寄与します。
これにより、工事費用を最小限に抑えつつ品質を確保できるのです。
雨漏りリスクをまとめて解消できる
建物全体の防水性を高めるには、屋上と外壁の両方をバランスよくメンテナンスすることが不可欠です。
屋上だけ施工しても外壁が劣化していれば雨漏りの危険は残り、逆に外壁だけ施工しても屋上から浸水するリスクが拭えません。
同時施工であれば、建物全体を一度にカバーできるため、雨漏りのリスクを根本から減らすことができます。
また、施工後のメンテナンスや点検も一括して計画できるため、長期的な安心感を得られます。
将来のメンテナンス計画が立てやすい
防水工事には周期があり、屋上は10〜12年程度、外壁は10〜15年程度が目安とされています。
別々に施工した場合、それぞれの工事時期がずれてしまい、次回もバラバラに施工せざるを得なくなります。
一方、同時施工を選択すれば、次回のメンテナンス時期を揃えられるため、修繕計画の立案が容易になります。
管理組合やオーナーにとっては、長期的な資金計画を立てやすいことも大きなメリットです。
資産価値の維持や入居者満足度の向上にも直結します。
屋上と外壁の防水工事の種類と特徴
防水工事にはさまざまな工法があり、建物の構造や劣化の度合い、利用環境によって最適な方法が異なります。
例えば、屋上であれば「人が頻繁に歩くかどうか」「大型設備が設置されているか」「水はけの良し悪し」などの条件で選択する工法が変わってきます。
一方、外壁では「既存の外壁材の種類」「劣化度合い」「美観の維持」などが重要な判断ポイントとなります。
正しい工法を選ばなければ、施工後すぐに再劣化してしまい、余計な修繕コストを招く可能性もあるため注意が必要です。
ここでは代表的な工法を表で整理し、比較しやすくしました。
屋上防水工事の代表的な工法
工法名 | 特徴 | 耐用年数 | 備考 |
---|---|---|---|
アスファルト防水 | アスファルトシートを重ねる高耐久工法。重量があり大型建築物に適用。 | 約15〜20年 | 火気を扱うため安全管理必須 |
FRP防水 | ガラス繊維入り樹脂で施工。軽量かつ強度が高く歩行も可能。 | 約10〜12年 | ベランダや駐車場にも利用可 |
シート防水 | 塩ビなどのシートを貼り付け。広範囲を効率的に施工可能。 | 約10〜15年 | 下地調整が重要 |
浸透性塗布防水 | ケイ酸塩を浸透させコンクリート内部に防水層を形成。 | 約10年以上 | 定期的なメンテ不要のケース多い |
外壁防水工事の代表的な工法
工法名 | 特徴 | 耐用年数 | 備考 |
---|---|---|---|
防水塗装工事 | 弾性塗料で外壁表面を防水膜で保護。軽度〜中程度劣化に対応。 | 約10〜15年 | コストパフォーマンスが高い |
コーキング打ち替え | 外壁やサッシの隙間を埋める。劣化防止に必須。 | 約10年 | 小規模でも重要な工事 |
サイディング張り替え | サイディングと防水シートを交換。高額だが性能回復に有効。 | 約20年以上 | 外観一新・資産価値維持 |
これらの工法はそれぞれメリットとデメリットがあり、建物の状態を専門業者に診断してもらったうえで選択することが欠かせません。
例えば「費用を抑えたいならシート防水」「長期的な耐久性を重視するならアスファルト防水」など、目的に応じて判断する必要があります。
屋上と外壁の防水工事を同時に行う場合の費用相場
防水工事を検討する際、多くの方が気になるのが「総額でどのくらいかかるのか」という費用面です。
費用は工法の種類や建物の規模、劣化状況によって大きく変動するため一概には言えませんが、相場を把握しておくことで見積もりを受け取った際に妥当性を判断しやすくなります。
特に屋上と外壁を同時施工する場合は、単純な工法ごとの単価だけでなく、足場の有無や施工範囲、下地処理にかかる手間などが総額に大きく影響します。
屋上防水工事の費用目安
工法名 | 費用相場(1㎡あたり) | 備考 |
---|---|---|
撤去工法 | 4,000〜5,000円 | 既存防水層を撤去後に施工 |
かぶせ工法 | 3,000〜5,000円 | 既存層の上に新しい層を施工 |
外壁防水工事の費用目安
工法名 | 費用相場(1㎡あたり) | 備考 |
---|---|---|
防水塗装 | 6,000〜7,000円 | 弾性塗料を使用 |
コーキング打ち替え | 950〜1,200円 | 隙間補修に必須 |
サイディング張り替え | 約14,000円〜 | 高額だが全面性能回復 |
ひび割れ補修 | 約2,500円〜 | 部分的な補修に対応 |
同時施工と別施工の費用比較
施工方法 | 費用感 | 特徴 |
---|---|---|
別々に施工 | 約800万円(例) | 足場費用が2回分発生しやすい |
同時施工 | 約700万円(例) | 足場を一度で済ませ10〜20%削減 |
さらに、屋上と外壁を同時に行うことで費用を抑えられるというメリットは見逃せません。
足場を一度で済ませられるだけでなく、施工スタッフの移動や工程管理の効率化によって人件費も削減されます。
長期的な資産価値を考えれば、多少初期費用が高くても同時施工を選んだ方が結果的に経済的といえるでしょう。
屋上と外壁の防水工事を同時に施工する場合の流れ
工事の流れを理解しておくことで、実際に施工を依頼した際に「今どの段階なのか」を把握でき、安心感につながります。
特にマンションやビルでは居住者やテナントに対して事前説明が必要になるため、施主自身が流れを理解しておくことは大切です。
ステップ1.工事内容やスケジュールの決定
まず最初に専門業者による建物診断を受けます。
この診断では、屋上や外壁にひび割れや浮きがないか、コーキング材が劣化していないかなどを細かく確認します。
その結果をもとに、どの工法を採用するか、どの範囲を施工するかを決めます。
マンションの場合は管理組合で協議が行われ、住民合意を得てから正式に発注する流れとなります。
ステップ2.足場の設置
高所作業では安全確保が第一です。
足場を組むことで作業員が安定して作業でき、施工品質の向上にもつながります。
足場は外壁だけでなく屋上の作業動線にも利用されるため、同時施工で設置するメリットは非常に大きいといえます。
ステップ3.施工箇所の洗浄・下地処理
洗浄工程では高圧洗浄機を使用し、外壁や屋上の汚れ・カビ・古い塗膜を除去します。
これを怠ると新しい防水材や塗料の密着が悪くなり、施工不良の原因となります。
さらに、ひび割れ補修や下地調整もここで行われ、防水材が長持ちする基盤を整えます。
ステップ4.屋上防水工事の施工
屋上の状態に応じて、撤去工法またはかぶせ工法が選択されます。
撤去工法は既存の防水層を剥がして新しく施工する方法で、下地をリセットできるため効果が長持ちします。
一方、かぶせ工法は既存層を残してその上に新しい防水層を施工するため、工期が短くコストも抑えられるのが利点です。
建物の使用状況や予算に応じて選択されます。
ステップ5.外壁防水工事の施工
外壁では、劣化状況に応じて防水塗装やコーキング打ち替えを行います。
特にコーキングは見落とされがちですが、雨水の侵入口となりやすいため非常に重要です。
サイディングが劣化している場合には張り替えを行い、外観と防水性能を同時に回復させます。
ステップ6.完了検査・引き渡し
施工後には必ず検査が行われます。
施工不良がないか、仕上がりに問題がないかを確認し、必要に応じて補修が行われます。
その後、施主や管理組合の立ち会いで正式に引き渡しとなり、保証書や今後のメンテナンス計画について説明が行われます。
ここで保証内容をしっかり確認しておくことが、後々の安心につながります。
屋上と外壁の防水工事を同時施工するメリットを逃さないための業者選び
屋上と外壁の防水工事を成功させるには、信頼できる業者を選ぶことが何よりも大切です。
同時施工は費用削減や工期短縮といったメリットがありますが、工事規模が大きいため業者の力量によって仕上がりや耐久性に差が出やすいのも事実です。
ここでは業者を選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説します。
複数の業者に見積もりを依頼する
必ず複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
単一の業者だけだと費用が高いのか安いのか判断できません。
相見積もりを取ることで、費用相場や工事内容の比較が可能になります。見積書には工事項目や使用する材料、保証の有無などが明確に記載されているかを確認し、不明点は必ず質問することが重要です。
保証内容やアフターフォローを確認する
防水工事は施工後すぐに効果が分かるものではなく、数年経過してから不具合が現れることもあります。
そのため保証の有無や期間、保証範囲を事前に確認することが欠かせません。
また、定期点検や緊急時の対応といったアフターフォロー体制が整っている業者であれば、長期的な安心につながります。
施工実績や専門性を確認する
屋上と外壁の同時施工は規模が大きく、経験の浅い業者では対応が難しいことがあります。
過去の施工実績や事例を確認し、同規模の建物を手掛けた経験があるかどうかをチェックしましょう。
特にマンションやビルの修繕経験が豊富な業者は、居住者やテナントへの配慮も含めて安心して任せられます。
担当者の対応力を見る
工事に関する説明が丁寧で、質問にも誠実に答えてくれる担当者は信頼に値します。
逆に「とにかく安い」「今すぐ決めてほしい」と急かすような業者は注意が必要です。
契約前の対応でその業者の姿勢を見極めることが大切です。
屋上と外壁の防水工事に関するよくある質問(FAQ)
防水工事を検討する際に多く寄せられる質問をまとめました。
Q1:屋上と外壁の防水工事は何年ごとに行うべきですか?
A.屋上は10〜12年、外壁は10〜15年ごとが目安です。
ただし、日当たりや風雨の影響を強く受ける建物は劣化が早いため、早めの点検・修繕が推奨されます。
Q2:屋上だけ、または外壁だけ先に施工しても大丈夫ですか?
A.可能ではありますが、片方が劣化していると雨漏りリスクは残ります。
費用や工期の効率性を考えると、同時施工のほうが合理的です。
Q3:同時施工と別施工ではどのくらい費用が変わりますか?
A.建物規模にもよりますが、同時施工であれば足場費用などを一度で済ませられるため、総額で10〜20%程度の削減が期待できます。
Q4:工事中は普段通り生活できますか?
A.外壁塗装や防水工事では騒音や臭いが発生することがありますが、通常は居住しながら工事を進めることが可能です。
マンションの場合は事前に管理組合から告知が行われ、生活への影響を最小限に抑えるよう配慮されます。
Q5:信頼できる業者を見極めるポイントは何ですか?
A.施工実績の豊富さ、見積書の明確さ、保証内容の充実度、担当者の説明力などを総合的にチェックしましょう。
口コミや過去の事例写真も判断材料になります。
屋上と外壁の防水工事を同時に行いメリットを逃さないようにしよう|まとめ
屋上と外壁の防水工事は、建物を長く安全に使い続けるために欠かせないメンテナンスです。
両方を同時に施工することで工期を短縮でき、足場費用を含めたコストも削減できます。
さらに建物全体の防水性を高めることで雨漏りリスクを一括で解消でき、将来のメンテナンス計画も立てやすくなります。
施工方法や費用相場を正しく理解し、信頼できる業者を選ぶことが、資産価値を守りながら安心して暮らし続けるための最善の方法です。
防水工事を検討している方は、適切なタイミングで屋上と外壁の同時施工を行うことを強くおすすめします。