モルタル防水と防水モルタルの違いとは?用途・特徴・選び方を徹底解説!
2025/07/31
「モルタル防水」と「防水モルタル」という言葉は、非常に似ており、現場関係者であっても混同されやすい用語です。しかし、それぞれが持つ意味や使われるシーンには明確な違いが存在します。この記事では、両者の違いと特徴を明確にし、用途別の選び方や注意点までわかりやすく解説します。DIYを検討している方から施工業者まで、誰にとっても参考になる内容を目指します。
モルタル防水とは?
モルタル防水は、モルタルを用いた下地処理を含む防水工法の一種です。防水層そのものではなく、防水材を施工するための基礎づくりにおいて重要な役割を果たします。
モルタル防水の基本概念
「モルタル防水」とは、セメントと砂、水を混ぜて作るモルタルを用いて、主に下地の調整や勾配形成を行う防水工事の一工程です。モルタル自体には防水性がないため、最終的には別の防水材で仕上げる必要があります。
一般的な施工方法と使用場所
モルタル防水は、既存の構造物の表面を整える役割を持つため、施工前の下地調整として広く使われています。具体的な施工手順は以下の通りです。
- 施工面の清掃・処理
- プライマー塗布
- モルタルによる下地調整(勾配・不陸調整)
- 防水材の施工(ウレタン・シート・FRPなど)
主な使用箇所には、屋上、バルコニー、ベランダなどの屋外スペースがあります。
特徴とメリット・デメリット
モルタル防水の特徴を理解することで、施工計画や材料選定の判断がしやすくなります。
- メリット:自由な勾配形成が可能/下地の安定性を高められる/さまざまな防水工法と併用可能
- デメリット:モルタル自体には防水機能がない/ひび割れのリスクがある/施工技術によって品質に差が出やすい
モルタル防水は、あくまで防水層を支える基礎づくりの手段であることを理解しておくことが重要です。
防水モルタルとは?
防水モルタルは、モルタルに防水性能を付加した建材で、防水層としても使用できる製品です。DIYや補修用途としても注目されています。
防水モルタルの定義と成分
防水モルタルとは、セメントや砂に加え、防水材を混合することで水の浸透を防ぐ機能を持たせたモルタルのことです。ポリマーセメントモルタルやカチオン系モルタルなどがその代表例です。
含まれる防水材の種類
防水モルタルの性能は、配合される防水材の種類によって大きく異なります。
- ポリマー系:柔軟性があり、ひび割れに追従しやすい
- アクリル系:紫外線や雨に強く、屋外向き
- エポキシ系:高密着・高強度だが価格は高め
- カチオン系:コンクリート面との密着力が高い
それぞれの特性に応じて、適切な使用場所や施工方法を選ぶことが求められます。
使用シーンと防水性能
防水モルタルは、以下のような多様な場面で活用されています。
- 浴室や洗面所などの水回り
- プールや水槽の内面防水
- ベランダや屋上の補修工事
- コンクリート表面のクラック補修
防水材を含むため、それ単体で簡易的な防水層としても機能します。特に、既存防水層の補修や重ね塗りにも対応できることが強みです。
モルタル防水と防水モルタルの違いを比較
「モルタル防水」と「防水モルタル」は似た名称ですが、概念も用途もまったく異なります。このセクションでは、その違いを明確に比較します。
呼び方の違いと意味の違い
モルタル防水は施工方法の名称、防水モルタルは防水性能を持った建材の名称です。以下のように整理できます。
- モルタル防水:下地調整としてのモルタル使用+防水層の構成
- 防水モルタル:モルタルに防水材を混ぜた、機能性を持つ製品
用途や施工手順に大きな違いがあることに注意が必要です。
用途・施工性・耐久性の違い
比較項目 | モルタル防水 | 防水モルタル |
---|---|---|
概念 | 工法 | 材料 |
防水性能 | モルタル自体はなし | 製品によって高い |
使用場所 | 屋上、バルコニー | 浴室、補修、防水層 |
施工工程 | 複数(下地→防水) | 単体施工も可能 |
DIY適性 | 中~低 | 高 |
耐久性 | 防水材に依存 | 製品仕様に依存 |
選び方のポイント
- 大規模工事や高耐久が求められる場合は「モルタル防水+防水材」
- 簡易施工・DIYや補修には「防水モルタル」
このように、施工目的とスキルに応じて、適切な選定を行うことが重要です。
各種モルタル防水工法と使用シーン
モルタル防水がどのような工法で用いられるか、そして具体的な使用シーンについて紹介します。
FRP防水下地としての使用
FRP防水は、耐久性・耐水性ともに優れた工法であり、ベランダや屋上などで多用されます。この工法では、FRP樹脂を施工する前に、モルタルで下地を整えることが重要です。特に排水の勾配を取る目的で、モルタルが必須となります。
屋上・ベランダ・浴室での事例
以下のような場所でモルタル防水が活用されています。
- 屋上:広い面積に対し、排水勾配を確保しつつ防水層を施工
- ベランダ:下地補修や傾斜形成後にウレタンやFRPを施工
- 浴室:水の浸透を防ぐための下地調整にモルタルを使用
いずれも防水材との併用が前提であり、単体では防水効果は発揮しません。
勾配調整用と防水層仕上げ用の使い分け
モルタル防水は、主に下地調整や勾配形成などの構造的要素に利用されます。一方で、防水層として仕上げを兼ねる場合は、防水性能を持つ「防水モルタル」の使用が推奨されます。
防水モルタルの選び方と注意点
防水モルタルはさまざまな製品が市販されており、それぞれ成分や性能が異なります。この章では、施工場所や目的に応じた適切な選び方と、使用時に注意すべきポイントについて解説します。
選び方のポイント
防水モルタルを選定する際には、次のようなポイントを確認することが重要です。
- 施工箇所に合った性能があるか:屋外か屋内か、常時水がかかるかなどで適する製品が変わります。
- 下地との密着性:コンクリート、モルタル、タイル面など、施工対象との相性を確認しましょう。
- 厚塗りか薄塗りか:用途によって1回塗りで十分な場合と、複数回塗りが必要な場合があります。
- 施工温度と乾燥時間:冬場の施工では硬化時間や凍結リスクにも注意が必要です。
製品ラベルやメーカーの技術資料をよく読み、仕様書に合致する製品を選定することが失敗防止の鍵となります。
使用上の注意点
防水モルタルは便利な材料ですが、使用時にはいくつかの注意が必要です。
- しっかりと撹拌すること:防水性能を均一に発揮させるには、粉体と水を適切に混ぜることが必要です。
- 規定の施工厚を守ること:薄すぎると防水性が確保できず、厚すぎると乾燥に時間がかかることがあります。
- 乾燥中の雨や凍結に注意:養生期間中に雨水がかかると、防水層が形成されず剥がれやすくなります。
このような基本を守れば、防水モルタルは高性能な仕上げ材として十分に機能します。
DIYで使うならどちらが適している?
近年、DIYでの外装補修や簡易防水が注目される中で、「モルタル防水」と「防水モルタル」のどちらを選べばよいのかという疑問を持つ方も多いです。この章では、DIYで使う場合の適性や選び方について説明します。
モルタル防水はDIYに不向き?
モルタル防水は、複数の工程を要し、仕上がりに施工技術が大きく影響します。
- 下地処理、勾配調整、プライマー塗布、防水材施工など、多工程にわたる
- プロ用の道具や養生設備が必要なケースが多い
- 勾配や仕上げ厚の正確な管理が難しい
そのため、DIYでは施工不良による漏水リスクが高く、あまりおすすめできません。
防水モルタルはDIY向き
防水モルタルは、比較的扱いやすく、DIYにも適しています。
- 1材型や2材型があり、水と混ぜるだけで使用できる製品も多い
- 説明書に従って施工すれば、防水層としての性能も発揮できる
- 簡単なひび割れ補修や部分防水に最適
ただし、施工厚や乾燥時間を守る必要があり、過信は禁物です。適した用途と範囲で使用すれば、DIYでも十分に活用可能です。
よくある質問(FAQ)
防水モルタルとモルタル防水に関して、多く寄せられる疑問とその回答を紹介します。
Q1. モルタル防水と防水モルタルは同じものですか?
A. いいえ、異なるものです。モルタル防水は施工工程の一種であり、防水材を塗るための下地調整です。一方、防水モルタルは製品そのものに防水性がある建材です。
Q2. 防水モルタルだけで防水層として十分ですか?
A. 使用環境や製品によります。浴室や部分補修なら十分なことが多いですが、屋上やベランダなど広い面積の場合は別途トップコートやシート防水が必要なこともあります。
Q3. DIYで使うならどちらが簡単?
A. 一般的には防水モルタルの方が簡単です。モルタル防水は下地処理から多くの作業が必要なため、DIYには不向きです。
Q4. モルタル防水はどの防水材と組み合わせるべき?
A. ウレタン防水、FRP防水、塩ビシート防水など、施工場所に応じて選定されます。施工業者と相談し、適材適所の選定が重要です。
Q5. 防水モルタルの耐久年数は?
A. 製品によりますが、5年~10年程度が一般的です。ただし、施工条件や環境によって大きく変動します。
まとめ
「モルタル防水」と「防水モルタル」は、似た名称ながら性質も用途もまったく異なります。
- モルタル防水は、防水材を施工するための下地処理を含む工法で、防水性能自体はモルタルにはない
- 防水モルタルは、防水材を配合した建材であり、簡易防水や補修に適している
- DIYで使用するなら、防水モルタルが扱いやすく、施工も比較的簡単
- 製品選定時には、施工場所・使用環境・下地との相性をしっかり確認することが大切
しっかりと理解し、適切に使い分けることで、防水工事の品質と耐久性を高めることができます。用途に合わせた材料選びと、正しい施工が防水の成功には欠かせません。