シーリング工事はマンションの外壁や屋上に必要?劣化原因や役割を解説
2024/05/24
「シーリング工事」という用語に、馴染みがない方も多いかもしれません。
しかし、シーリング工事は、マンションの大規模修繕において重要な役割を果たします。
目立たないながらも、マンションの防水性や気密性を維持するためには、シーリング工事が不可欠です。
外壁の寿命が10~20年と言われるなか、シーリングは5~10年で劣化するため、早めの対策が求められます。
そこでこの記事では、シーリング工事の必要性やシーリング材の種類、工事の適切なタイミング、そして費用について解説していきます。
マンションの管理組合の方々がシーリング工事を検討する際の参考になるよう、注意点も併せてご紹介していますので、ぜひ読んでみてください。
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マンションのシーリング工事とは
建物の、隙間を塞ぐために行うのがシーリング工事です。
サッシの周辺やコンクリートの接合部、タイルの目地に施されるのが一般的です。
接合部や目地にシーリング剤を充填することで、建物の防水性・気密性を保てます。
また、外壁材やコンクリートが、気温の変化で膨張・収縮したり、地震で揺れたりした場合に破損しないようにする目的でも、クッションとしてシーリング材が使われます。
ただし、シーリング材も他の建築材料と同じく経年劣化するため、前回のシーリング工事から5~10年後に、再びシーリング工事が必要になるでしょう。
シーリング材の劣化を放置すると、その箇所から雨水が入り込み、建物内部に雨漏りを発生させたり、構造自体にダメージを与えたりするので要注意です。
■シーリング工事には2種類ある
シーリング工事には「打ち替え」と「増し打ち」の2種類があります。
打ち替えは、古くなったシーリング材を除去し、新しいシーリング材を充填する方法です。
これなら、新築時のようなシーリング効果を発揮できます。
増し打ちは、既存のシーリング材を残した状態のまま、その上から新しいシーリング材を注入する方法です。
劣化が著しい箇所のみを補修できて費用もリーズナブルですが、打ち替えと比べると耐用年数は短くなるでしょう。
打ち替えと増し打ちのどちらが採用されるかは、工事を行う箇所の状態によって変わります。
シーリング材の種類
シーリング材には、さまざまな種類があります。
具体的には以下のような種類があるので、それぞれについて詳しく解説していきます。
- シリコン系
- 変性シリコン系
- ウレタン系
- ポリサルファイド系
- アクリル系
■シリコン系
最も普及しているのがシリコン系のシーリング材です。
耐熱性があり、雨水にも耐えてくれます。
ただし、シリコン系シーリングの上からの塗装はできないので注意しましょう。
■変性シリコン系
熱・水に強く、耐久性も高いです。
外壁・屋根・サッシ周りでは、主に変性シリコン系のシーリング材が使われます。
シリコン系とは異なり、上から塗装も可能です。
■ウレタン系
耐久性があるものの、紫外線には弱いので、屋外への施工には向きません。
また、ホコリが付きやすいので上から塗装が必要です。
■ポリサルファイド系
耐熱性があり、ホコリも付着しにくい特徴があります。
ただし、柔軟性が低く、金属への施工には向きません。
コンクリートやタイルの目地に使われることがあります。
■アクリル系
湿った箇所にも施工できます。
ただし、耐久性が低いので、応急処置的に使うのが良いでしょう。
マンションのシーリング工事を行うタイミング
マンションでシーリング工事を行うのは、前回のシーリング工事から5~10年後です。
ただし、マンションのある環境によって、シーリング材の劣化度合いは異なるので、定期的に点検してタイミングを考えなければなりません。
そこまで劣化が進んでいなければ、12~15年に1度行われる大規模修繕のタイミングに合わせて、シーリング工事を行うのも良いでしょう。
劣化が進んでいる場合は、大規模修繕を待たずにシーリング工事を行ったほうが、結果的には修繕費用の節約につながります。
マンションのシーリング工事にかかる費用
▼マンションのシーリング工事にかかる費用
マンションのシーリング工事では、以下のような費用がかかります。
- 打ち替え…900~1,200円(1メートルあたり)
- 増し打ち…500~900円(1メートルあたり)
増し打ちのほうが安いですが、劣化が進んでいる場合、増し打ちができないケースもあります。
どちらの工事が良いかは、専門家に相談してみてください。
また2階以上の建物で施工する場合は、上記の費用以外に足場の設置費用も発生します。
足場の設置費用は、1平方メートルあたり900~1,100円ほどかかるでしょう。
ちなみに、大規模修繕の際にシーリング工事を行うと、他の工事のために設置した足場をそのまま使えるので、工事費用を抑えられます。
シーリング工事の流れ
ここではシーリング工事の流れをご紹介していきます。
打ち替えと増し打ち、それぞれの流れについて解説していきます。
■打ち替え
①既存のシーリング材の除去
まずは、既存のシーリング材の除去が必要です。
カッターを使って、完全に除去します。
既存のシーリング材を完全に除去しないと、施工品質が落ちるので注意が必要です。
②バックアップ材の設置
目地の底部を整えるために、バックアップ材を設置します。
③養生
シーリング材がはみ出ないように、周囲をマスキングテープで養生(保護)します。
④プライマーの塗布
接着剤であるプライマーを塗布します。
ちなみに、プライマーとシーリング材の接着方法には「2面接着」と「3面接着」の2種類があります。
2面接着では、隙間の左右2面にプライマーを塗ることで、建物の温度変化や地震の揺れに対応できるように「遊び」を持たせます。
一方、3面接着では底の部分にもプライマーを施します。
3面接着は、動きが少ない部分でのシーリング工事で用いられます。
⑤シーリング材の充填
ここでようやく、シーリング材を充填します。
ヘラを使って充填した箇所を平らにし、マスキングテープを取り除くと、綺麗に仕上がります。
施工後は、完全乾燥させてシーリング工事の完了です。
■増し打ち
シーリングの増し打ちでは、打ち替え工事の初期段階の工程が省かれ、マスキングテープで養生する工程からスタートします。
次に、プライマーを塗布し、シーリング材を充填する流れです。
ちなみに、サッシ周りのシーリングでは、あえて増し打ちが選択されます。
これは打ち替えでカッターを使うと、奥にある防水紙を誤って切ってしまう恐れがあるからです。
また壁の2面が接する箇所の、内側のへこんだ「入隅」にも、増し打ちが採用されることがあります。
これは、既存のコーキングの除去が難しい場合があるからです。
マンションで行うシーリング工事の注意点
マンションでシーリング工事を行う際は、以下のことに注意する必要があります。
- 騒音とにおいの発生
- 悪天候による工事の中断
- 増し打ちによる剥離のリスク
- 業者ごとの技術力の違い
■騒音とにおいの発生
足場を組んだり、既存のシーリング材を除去する作業では、騒音が発生します。
マンション住民・周辺住民によって大きなストレスとなる場合があるので、事前に挨拶まわりをしたり、チラシを配って理解を促したりする必要があるでしょう。
また、シーリング材が固まる過程で、強いにおいが発生することがあります。
材料によっても異なりますが、この点も施工前に、業者に確認しておきましょう。
■悪天候による工事の中断
悪天候によって工事が中断することもあります。
特に雨や強風の日には、シーリング工事を行えません。
雨の日は下地が湿った状態になり、下地とシーリング材が上手く密着しないことがあるのです。
結露が発生する寒い日も注意が必要です。
また、強風の日もシーリング材にゴミが付着したり、シーリング材が変形したりするので、工事は行われません。
一般的に気温15~25℃・湿度80%以下で風のない日が、シーリング工事に適しています。
シーリング工事を検討する場合、悪天候も考慮しながら、余裕を持って計画を立てることが大切です。
■増し打ちによる剥離のリスク
打ち替えと比べると増し打ちは、既存のシーリング材と新しいシーリング材との間に隙間ができやすいです。
隙間ができるとシーリング材が剥がれるので注意が必要です。
増し打ちは、基本的には応急処置と考えましょう。
打ち替えと増し打ちのどちらが良いのか、専門業者としっかり相談して判断しなければなりません。
増し打ちを選択する場合は、将来の打ち替えも見据えて、工事を行うと良いでしょう。
■業者ごとの技術力の違い
シーリング工事の品質は、作業員の技術力に大きく依存します。
よって、高い技術力を持つ業者に施工を依頼する必要があります。
また天候により工事をするかどうかの判断も、しっかりできる業者を選びましょう。
専門でシーリング工事を行っている業者であれば、安心感があります。
また、施工不良が発生しないように、施工後に足場を解体する前に、品質チェックを行うことが大切です。
まとめ
最後に、この記事の内容をまとめていきますので、復習のためにお役立てください。
- シーリング工事は、マンションの防水性・気密性を維持するために重要
- 外壁の寿命は10~20年だが、シーリングは5~10年で劣化するため、定期的なメンテナンスが欠かせない
- シーリング工事には「打ち替え」と「増し打ち」の2種類があり、それぞれに適した状況がある
- シーリング材には「シリコン系」「変性シリコン系」「ウレタン系」「ポリサルファイド系」「アクリル系」という種類がある
- シーリング工事のタイミングは、前回の工事から5~10年後、または大規模修繕の際
- 費用は打ち替えが1メートルあたり900~1,200円、増し打ちが500~900円
- 足場の設置には別途で費用がかかる
- シーリング工事は、既存のシーリング材の除去から始まり、複数の工程がある
- 「騒音やにおいの発生」「悪天候による工事の中断」「増し打ちによる剥離のリスク」「業者の技術力の違い」に注意する
上記のようなポイントは、適切なシーリング工事を行うためには欠かせません。
専門業者に相談することにより、シーリング工事に最適なタイミングを判断できるようになるでしょう。