歩行レベルに合わせた防水工法の選び方を解説
2024/06/19
建物には、人の出入りが多い場所、少ない場所があります。
通行の多さによって、床面の損傷や劣化の度合いも異なります。また防水の種類によっては、歩行に強い防水、弱い防水があります。
人の出入りが多い場所は適切な防水工事が不可欠です。
今回の記事では、歩行頻度が工事選定に与える影響や、歩行頻度を考慮した防水工事の選び方について解説していきます。
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防水層の重要性と歩行頻度の影響とは
歩行頻度が防水層に及ぼす影響は大きいです。
防水層の摩耗
歩行により防水層が摩耗し、表面が削れたり傷ついたりすることがあります。これにより防水性能が低下し、水漏れのリスクが高まります。
圧力
歩行によって発生する圧力は、防水層に負荷をかけます。
長期間にわたって高い圧力がかかると、防水層が破損したり変形したりする可能性があります。
亀裂
歩行による振動や衝撃は、防水層に亀裂が生じる原因となります。
亀裂が発生すると、水が浸入して防水効果が損なわれる可能性が高まります。
摩耗
防水層の表面が歩行によって磨かれることで、表面の保護層やコーティングが剥がれる可能性があります。
これにより、防水層の耐久性が低下し、劣化が進むことがあります。
これらの影響を考慮し、適切な保護措置を講じることが重要です。
歩行レベルとは
歩行レベルは、場所ごとに人の出入りの頻度を示す指標です。防水工法の選択において重要な要素となります。
歩行レベル | 内容 | 建物例 |
---|---|---|
非歩行 | ・基本的に人が立ち入ることはない ・点検や清掃などのメンテナンス程度の歩行 ・設備の点検や通路として使用する場合は、軽歩行仕様に準じる必要がある |
一般的な住宅や事務所ビル |
軽歩行 | ・特定数の人が立ち入り、防水層に負担をかけないゴム底の靴やスリッパを着用しての歩行 ・屋上利用は建物の所有者など限定的な人に制限され、歩行頻度も比較的少ない |
集合住宅の屋上、ベランダやバルコニー |
歩行 | ・屋上の利用には不特定多数の人が立ち入り、台車なども使用する可能性があるため、コンクリート保護仕様が必要 ・利用の制限を原則として設けず、不特定多数の人の歩行に対応するため、露出防水は適さない |
商業施設の屋上広場、大規模は屋上公園 |
重歩行 | ・不特定多数の人が立ち入る ・一般車両の走行が可能 |
屋上駐車場、車両の通行可能な屋上 |
歩行レベルによって採用される防水工法
歩行頻度の高さに応じて、採用される防水工法が異なります。
一般的に、露出防水工法と保護工法の2つがあります。
各工法では、防水層と下地の間に断熱材を挟むことで歩行が可能な場合もあります。施工する場所や用途によって、断熱材の有無が判断されます。
露出防水工法
露出防水工法は、防水面が露出している状態の工法です。
一般的には露出防水と保護防水の2種類があります。保護防水は、防水層をコンクリートやモルタルで保護する方法です。
マンション屋上などでは、アスファルト防水やシート防水(ゴムシート防水・塩ビシート防水)、塗膜防水(ウレタン防水、FRP防水、セメント)などの方法が一般的です。
露出防水のメリットは、防水層が直接確認できるので、破損箇所の発見が容易ですが、保護されていないため破損の危険性が高く、下地の水分が蒸発すると防水層が膨らみやすく破損の原因になることがあります。
保護工法
保護工法(押さえコンクリート)は、比較的歩行頻度が高い場所で採用されます。
一般的には、シート防水工法やウレタン防水工法で施工された防水層の上に押さえコンクリートを載せる工法です。
また、アスファルト防水は直接歩行に使用すると損傷しやすいため、保護コンクリート、押さえコンクリートで保護する必要があります。
押さえコンクリートは紫外線から防水層を守り、屋上やバルコニーの防水層の上に施されます。
歩行レベルに応じた防水工法の選択方法
歩行レベルに応じた防水工法は以下の通りです。
歩行レベル | 防水工法 | 耐摩耗性 |
---|---|---|
非歩行 | アスファルト防水(保護モルタル仕上げ)ゴムシート防水 | ほとんどない |
軽歩行 | 塩ビシート防水ウレタン防水 | 低い |
歩行重歩行 | FRP防水セメント防水 | 高い |
耐摩擦性とは
物質が摩擦や擦過によってどの程度耐えられるかを示す性質です。
防水材料の耐摩耗性が高いほど、長期間の使用において劣化が少なく、寿命が長いと考えられます。
特に、耐摩耗性が高いFRP防水は、国土交通省や建築学会JASS8仕様において、通常の歩行にも適用可能と認定されています。
歩行頻度が高い場所における適切な防水工事
歩行頻度が高い場所には、適切な防水工事が必要です。以下は、歩行レベルに合わせた適切な防水工法の紹介です。
場所 | 歩行レベル | 防水工法 |
---|---|---|
屋上 | 非歩行 軽歩行 |
アスファルト防水 ゴムシート防水 ウレタン防水 |
ベランダ バルコニー |
軽歩行 歩行 |
ウレタン防水 FRP防水 |
開放廊下 | 軽歩行 歩行 |
塩ビシート防水 FRP防水 |
デパートの屋上 屋上駐車場 |
重歩行 | FRP防水 セメント防水 |
歩行頻度が高い場所における防水工事のポイント
ここでは、歩行頻度が高い場所の防水工事のポイントを解説します。
防水層の厚み
歩行頻度が高い場所では、アスファルト防水は直接歩行によって損傷しやすいため、保護コンクリートまたは押さえコンクリートで保護する必要があります。
このようにコンクリートを防水層の上に設置することで、防水層を熱や衝撃から保護し、寿命を延ばし、耐久性を向上させることができます。
さらに、歩行面には滑り止め効果を高めるための処理も重要です。
歩行頻度が高い場所での必要な保護処置
歩行頻度が高い場所では、アスファルト防水は直接歩行によって損傷しやすいため、保護コンクリートまたは押さえコンクリートで保護する必要があります。
このように、コンクリートを防水層の上に設置することで、防水層を熱や衝撃から保護し、寿命を延ばし、耐久性を向上させることができます。
さらに、歩行面には滑り止め効果を高めるための処理も重要です。
適切な防水層の選定方法
歩行頻度が高い場所では、アスファルト防水よりもFRP防水が望ましいとされています。
さらに、シート防水や塗膜防水などは単体で施工せず、FRP防水との複合による防水層を形成することが効果的です。
まとめ
防水工事において、歩行頻度の高い場所では適切な防水工法を選ぶ必要があることについて解説しました。
歩行頻度に応じて採用される防水工法は、露出防水と保護工法の2種類に分けられます。
露出防水は防水面が露出しており、破損箇所の発見が容易ですが、保護されていないため破損の危険性が高くなります。
保護工法では押さえコンクリートなどを使用して防水層を保護します。また、防水工法の選定には、耐摩耗性の高さで選ぶことが重要です。
これらの内容を踏まえて、適切な防水工事を施しましょう。