工場・倉庫の屋根に行う防水工事の種類とは?ポイントや実施タイミングを解説
2024/06/19
工場・倉庫の屋根にはどういった防水工事を行う必要があるのでしょうか。
どういった工事をどのタイミングで行うべきか、施工にあたり気をつけたいポイントなどをまとめています。
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工場・倉庫の屋根防水は屋根の形状によって工事内容が異なる
工場や倉庫に限った話ではありませんが、屋根に施す防水工事は、屋根の形ごとに工事の内容は異なります。
工場や倉庫の屋根が、陸屋根(ろくやね)と呼ばれる、屋上のような見た目でフラットな形状の屋根の場合は、防水層を形成する工事を行います。
防水層を形成する工事には、ウレタン防水・FRP防水・シート防水・アスファルト防水があります。
陸屋根は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造でできた工場や倉庫で見られる屋根の形状です。
工場や倉庫でもっとも多い屋根の形状は、傾斜がついた屋根です。傾斜がついた屋根といっても、形状や呼び方はさまざまです。以下は傾斜がついた屋根の種類です。
- 切妻屋根
- 寄棟屋根
- 片流れ屋根
- 方形屋根
- 入母屋屋根
- はかま腰屋根
- しころ屋根
- 招き屋根
- 越屋根
- バタフライ屋根
- のこぎり屋根
なお、工場や倉庫で使われる屋根材には以下の2つが多いです。
- 波型スレート
セメントでできた波型の屋根材。小規模な工場や生産工業などで広く普及してきた。遮音性・耐久性・耐火性に優れている。 - 折板屋根
金属の板を折り曲げて作られた屋根材。大型建築物に用いられる。はぜ締めタイプ・重ねタイプ・嵌合式タイプの3種類がある。
防水工事は屋根の形状・材質に適した工法を選ぶことが重要です。
工場や倉庫の屋根にする防水工事
屋根の形状にあわせた防水工事を行うことが大切だということをお伝えしましたが、具体的にはどのような工事が必要になるのでしょうか。
工場や倉庫の屋根に対して行われることの多い4種類の防水工事を紹介します。
超速硬化ウレタン防水工法
主に陸屋根や屋上など、水平な屋根に対して行われる工事には、ウレタン防水・FRP防水・シート防水・アスファルト防水があります。
その中でも工事や倉庫などの大型の建物に用いられることが多いのが、「超速硬化ウレタン防水工法」です。
一般的なウレタン防水は液状のウレタン樹脂を職人が塗布することで防水層を形成します。
超速硬化ウレタン防水工法では、ウレタン防水材をスプレーガンで吹き付けていきます。
通常のウレタン防水工法と比べて短時間で硬化するため、工場や倉庫のような大きな建物の屋上も短い工期で施工できます。
ウレタン防水より強度もあるので、車や人の往来が多い屋根や重い荷物を置きたい場合にも最適です。
屋根塗装
工場や倉庫に限ったことではありませんが、ほとんど屋根材には屋根塗装のメンテナンスが欠かせません。
粘土瓦とノンアスベスト屋根以外は、定期的な屋根塗装により屋根材を保護することで、屋根材の耐用年数を大きく伸ばすことができます。
塗装によりできた塗膜は防水性能を保つだけでなく、紫外線や風雨から屋根材を守ってくれます。
定期的な屋根塗装を行うことで、屋根材本体の劣化を緩やかにし、カバー工法や葺き替え工事などの大掛かりな工事を先延ばしにすることができます。
カバー工法
カバー工法は、既存屋根の上から新しい屋根を被せる工法です。
穴が空いて雨漏りが起きてしまっている屋根や、劣化が激しく塗装での補修が難しい場合に採用されます。
吹き替え工事と比べると、屋根の撤去費用や廃材処理費用を抑えて施工できます。
屋根が重なる形になるので、屋根の重量が重くなり耐震性が下がることがデメリットといえます。
葺き替え工事
屋根を全て撤去して、新しい屋根を設置するのが葺き替え工事です。
屋根材の下に設置されているルーフィングや野地板の劣化状況も確認でき、それらもすべて補修・交換するため、屋根の機能は新築時と同様に回復します。
大掛かりな工事となり、工場や倉庫などの場合には、休業や荷物の移動などが必要となる可能性があります。
綿密なスケジュールの調整も必要となるでしょう。
工場や倉庫の屋根に防水工事をしないとどうなる?
躯体が劣化して耐久性が低くなる
屋根の防水効果が下がると、雨水はさまざまな部分から少しずつ建物内部へと染み込んでいきます。
水が侵入してしまった場所は、腐食が進みやすく、劣化が想像以上に早くすすんでしまいます。
つまり建物自体の寿命が大幅に短くなってしまうということです。
建物を長く安全に保つためにも、防水工事は必要不可欠です。
設備が故障する
漏水が起きた場合、倉庫や工場内にある設備が故障してしまうリスクがあります。
機械や設備類は水に弱いものも多く、修理に費用がかかるだけでなく通常業務にも影響が出るなど、建物被害以外にも大きな損害となってしまう可能性があります。
最悪の場合には、感電や火災など社員の安全を脅かす事態にもなりかねません。
漏電被害
配線周辺に水が漏れると漏電する危険があります。
漏電は電気代を高騰させるだけでなく、設備の故障や火災、感電などの可能性があり、非常に危険です。
稼働停止になって業務が滞る
倉庫や工場の場合、漏水してしまうと稼働停止に陥ることが少なくありません。
「設備故障で通常業務が行えない」「雨漏りがひどくて倉庫が利用できない」などといった事態になれば、客先への信頼問題にもなるかもしれません。
安易に考えず定期的な点検やメンテナンスを行うようにしましょう。
工場や倉庫の屋根に防水工事をするタイミングは?
防水工事はタイミングが非常に重要です。
必要なタイミングで適切な工事を行うことで、工事や倉庫を良好な状態に保つことができます。
下記を目安に、防水工事を検討してみてください。
劣化症状が見られるようになったとき
劣化がすすむと下記のような症状がみられます。
- 色褪せ
- 雨漏り
- ひび割れ
- 屋根材の痛み
- 塗膜の剥がれ
これらの症状が見られる場合には、早めに防水工事を行うことをおすすめします。
屋根材の耐用年数が経過したとき
屋根材や防水層にはそれぞれ耐用年数が設定されています。
目立った劣化症状がない場合でも下記の耐用年数が経過したタイミングで防水工事を行うといいでしょう。
- ウレタン防水:10年前後
- FRP防水:10~12年前後
- 塩ビシート防水:10~13年前後
- ゴムシート防水:10~12年前後
- アスファルト防水:15~20年前後
- 波型スレート屋根:30〜40年前後
- 折板屋根:35〜40年前後
雨漏りが起こっている
雨漏りが起こっている場合には、屋根周りのネジやボルト、建物の内部に水が侵入している可能性が高く早急な対応が必要です。
ネジやボルトが腐食していれば建具や屋根が外れる可能性もあり非常に危険です。
事故につながる前に、早めに専門業者に点検・修理を依頼しましょう。
工場・倉庫の屋根に防水工事を行う前に確認しておきたいポイント
防水工事を検討する際に、確認しておくとよいポイントがあります。
下記のポイントを確認しておくことで、工事内容やスケジュールなどの打ち合わせがスムーズに進みます。
屋根の劣化状況
まずは屋根の状況を正確に把握することが大切です。
業者に言われるままの工事をしてしまうと、過剰工事となってしまい費用が大きくなってしまう可能性もあります。
専門家の意見を取り入れるのは大切ですが、正しく状況を把握することで無駄な工事を省くことができるかもしれません。
配管の状況
工場や倉庫内にはたくさんの配管が張り巡らされています。
配管の固定具や内部が腐食すると、漏水の原因となるため、使われていない配管は撤去するのがおすすめです。
障害物の有無
屋根にはさまざま設備が設置されていますが、下記のような設備は工事の邪魔になる可能性があります。
- エアコンの室外機・架台
- プレハブ倉庫
- 手摺の基礎部分
- パラペット周辺の設備・笠木
- 高架水槽の基礎部分
- 太陽光パネルの基礎部分
移動の費用等もかかってくる可能性がありますので、事前に確認しておくと安心です。
屋根勾配
陸屋根で水溜りがある場合には、屋根勾配も確認しておきましょう。
勾配が不均一の場合、計算通りに排水がすすまず水溜りを作ってしまう可能性があります。
水溜りは劣化を早めてしまうため、勾配を修正する工事が必要です。
排水溝(ドレン)の詰まり
排水溝(ドレン)は落ち葉や土などが集まりやすく、詰まりやすい場所です。
排水溝まわりを掃除することで、スムーズに排水されるケースもありますので、まずは詰まりがないか確認してみましょう。
既存防水工法の種類
防水工事を依頼する前に、既存の防水工法を確認しておきましょう。
以前にどういった工法で防水工事がされているかによって、どういった工法で防水工事を行うか変わってくるからです。
前回の工事の時期もあわせて確認しておくとスムーズです。
防水屋根工事の業者を選ぶポイント
相見積もりをとって見積書を比較する
防水工事を依頼する場合には、必ず複数の業者から相見積もりをとりましょう。
工事費用の相場が確認できます。
また費用だけでなく、提案される工事内容や使用される資材・塗料等に大きな違いがある場合があります。
費用だけでなく工事内容も比較検討して決めることが大切です。
施工実績を確認する
施工実績をホームページなどで公表している業者も多く、確認することは難しくありません。
依頼前に、施工実績を確認しておくようにしましょう。
施工実績が多くても、倉庫や工場のような大きな屋根の防水工事をあまり施工していないということもあります。
倉庫や工場の防水工事を多く手がけている業者に依頼できると安心です。
まとめ
工場・倉庫の防水工事についてまとめると、
- 工場・倉庫に行う防水工事は、超速硬化ウレタン防水工法・屋根塗装・カバー工法・葺き替え工事などがある
- 防水工事を行わなかった場合、建物の躯体部分の劣化・設備故障・漏電・稼働停止などのリスクがある
- 防水工事を行うタイミングは、
・劣化症状が見られるようになったとき
・屋根材の耐用年数が経過したとき
・雨漏りがおこっているとき - 防水工事の業者を選ぶポイントは、「相見積もりをとる」「施工実績を確認する」
となります。
工場・倉庫を安全に営業するためにも、屋根の防水工事は欠かせません。
必要なタイミングで、適切な工事を行うよう心がけましょう。