屋根の葺き替え工事とは?費用相場やおすすめ屋根材・補助金制度について解説
2024/06/19
屋根のメンテナンスの中でも、最も効果が高いのが葺き替え工事です。
屋根が一新され新品同様な状態になる大掛かりな工事なだけに、失敗したくないと考える方も多いのではないでしょうか。
費用目安・後悔しないためのポイント・屋根材の選び方など、屋根の葺き替え工事について詳しく解説しています。
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屋根の葺き替え工事とは?
屋根の葺き替え工事とは、既存の屋根材やルーフィングなどを撤去し、新しい屋根に張り替える工事です。
経年劣化してしまった場合や、雨漏りが発生してしまった場合には、屋根の葺き替え工事を検討する必要があります。
防水性は新築時と同様まで回復するため、最も有効的なメンテナンス方法です。
使用する資材によっては、新築時以上の防水性・耐久性となり建物寿命を伸ばすことにつながります。
屋根葺き替え工事の費用
屋根の葺き替え工事は頻繁に行う工事ではありません。初めてという方の方が多いのではないでしょうか。
そのため費用がどのくらいかかるのか心配という方も少なくありません。
ここでは、屋根の葺き替え工事にかかる費用について紹介しています。
葺き替え工事の費用相場
平均すると、30坪程度の戸建て住宅の場合、150〜200万円程度となることが多いようです。
葺き替え工事の費用は、屋根の面積・形状・傾斜・使用する屋根材の種類などによって変わってきます。
注意したいのは、新しい屋根材だけでなく、既存の屋根の種類によってもかかる金額が変わってくることです。
金属屋根は比較的安く廃棄ができますが、アスベストが含まれているスレート屋根や瓦屋根は廃材費用が高くなります。
また土葺き屋根の場合には、下地調整の工程が必要となるため工事費用は高くなる傾向があります。
詳しい費用は実際にいくつかの業者から話を聞いて、見積もりをだしてもらうことをおすすめします。
葺き替え工事の内訳・単価
葺き替え工事の全体の費用は150万円〜200万円程度ですが、具体的な工事費用の内訳は下記のようになります。
使用する屋根材によって金額が違ってきます。
項目 | 単価相場(1㎡あたり) | |
新しい屋根材の施工費 | 日本瓦(和瓦)洋瓦 | 8,000〜15,000円 |
スレートカラーベストコロニアル | 5,000〜7,000円 | |
ガルバリウム鋼板 | 6,500〜8,000円 | |
既存屋根材の撤去費 | 1,500~3,000円 | |
下地補修費 | 2,000~3,500円 | |
ルーフィングシート | 500~1,500円 | |
足場代 | 600~1,500円 | |
アスベスト処理費(※古いスレート屋根の場合) | 20,000~85,000円 |
屋根の葺き替え工事にかかる日数
屋根の葺き替え工事にかかる平均日数は、6〜15日程度です。
屋外の工事のため、天候に左右されやすく梅雨の時期や台風シーズンなど、雨が降る季節は予定より時間がかかることがあります。
近年は真夏は猛暑となることも多いため、昼間の作業を控えたり作業員の作業効率が落ちたりする可能性もあります。
また日本瓦の葺き替えには時間がかかる傾向がありますので、余裕をもったスケジュールを組むようにしましょう。
葺き替え工事が必要な屋根とは?
屋根のメンテナンスといえば、屋根塗装を思い浮かべる方が多いですが、どういった場合に葺き替え工事を行う必要があるのでしょうか。
ひどい雨漏り・雨漏りで下地が腐食している場合
部分的な補修では防水性の確保が難しい場合や、ひどい雨漏りが発生している場合には、葺き替え工事が必要です。
屋根材の下にはルーフィングと呼ばれる防水シートが敷かれているため、屋根材が劣化したり破損したとしても、すぐに雨漏りが起こることはありません。
屋根材を補修しても雨漏りがおさまらないということは、ルーフィングシートも破損・劣化しているということです。
ルーフィングシートを修繕したり新しくしたりするためには、屋根材を撤去して葺き替え工事をする必要があります。
また雨漏りしている場合には、下地や建物の内部まで水が染み込み、木材が腐食している可能性も高くなるため、葺き替え工事をして野地板の補修も行うことがベストです。
屋根材の劣化がひどい場合
劣化症状が色褪せやカビ、小さなヒビ程度であれば、屋根塗装をすることで機能を回復することができます。
しかし大きなヒビ割れや、錆による穴、屋根の剥がれなどがみられる場合には、表面の屋根材だけでなく下地部分まで劣化が進んでいる可能性が高く、屋根塗装では修繕できません。
下地やルーフィングシートも劣化している可能性もあり、一新できる葺き替え工事が求められます。
築年数が長く、屋根材の寿命が経過している場合
種類にもよりますが、屋根材の寿命は30〜40年程度と言われています。
そのため築年数が30年を超えている場合には、葺き替え工事を検討してもいい時期です。
メンテナンスをほとんどしていなかった場合
屋根は定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
これまで点検や塗装などをしてこなかったという場合には、塗装ではなく葺き替え工事を勧められる場合があります。
定期的な塗装をしていない場合、新築時に屋根材を保護していた表面の塗膜はすでに劣化し、屋根材自体の劣化が進んでいる可能性が高くなります。
表面の塗膜に保護されなくなった屋根の劣化スピードは驚くほど早く、そうなってしまうと再塗装ではカバーすることはできません。
鉄製の屋根の場合には、錆が広がりボロボロになっているかもしれません。
築年数が経っていなくても、メンテナンスを怠れば早いタイミングで葺き替え工事が必要となります。
屋根塗装だけでは不十分な理由
屋根のメンテナンスといえば、屋根塗装を思い浮かべる方が多いと思いますが、屋根塗装では十分な効果が得られないこともあります。
屋根塗装の目的は、屋根材の防水性と美観の回復です。
そのため、屋根材自体に破損やダメージがある場合には、メンテナンスとしては不十分です。
すでに劣化がすすんでいる屋根を塗装しても、十分な効果が得られないだけでなく、塗装から時間をおかずに葺き替え工事が必要になることも考えられます。
結果としてメンテナンス費用が嵩むだけでなく、雨漏りの心配も拭えません。
屋根の葺き替え工事のメリット・デメリット
屋根の葺き替え工事のメリット
屋根のメンテナンスで、塗装やカバー工法ではなく葺き替え工事を選んだ場合、下記のようなメリットがあります。
- 屋根の耐久性が長くなる
- 軽くなることで耐震性能が改善
- 雨漏り問題が解決
- 美観の向上
屋根の耐久性が長くなる
表面の屋根材だけでなく、野地板やルーフィングシートなども新しくなるため、屋根は新品同様の機能を取り戻します。
数十年前と比べると、高性能なルーフィングシートや屋根材も数多く開発されており、より耐久性に優れた屋根となります。
軽くなることで耐震性能が改善
既存の屋根材より軽い屋根材を選択すれば、建物への負担が軽くなり耐震性が改善されます。
近年頻発している地震の備えとしても、葺き替え工事はおすすめです。
自治体によっては、耐震性能を改善するリフォーム工事として、補助金をだしていることも少なくありません。
雨漏り問題が解決
屋根材を一新するので、悩まされていた雨漏りも全て解決します。
「雨漏り箇所の修理をしても雨漏りがおさまらない」という時には、内部まで確認できる葺き替え工事を行います。
雨漏りの原因が、下地やルーフィングシートの劣化の可能性が高いからです。
美観の向上
新しい屋根材になるので、美観が向上します。
ご自宅の雰囲気にあわせた色や質感の屋根材を選択するなど、リフォームの楽しみも広がります。
屋根塗装でも美観は改善しますが、葺き替え工事では新品の屋根となり、大きな満足度が得られるでしょう。
屋根の葺き替え工事のデメリット
葺き替え工事のデメリットとしては下記のような点が挙げられます。
- 費用負担が大きい
- 工期が長い
- 音・埃・振動が発生する
屋根の葺き替え工事は、大掛かりな工事となるため、費用負担は大きく工期も長くなることを覚悟しておきましょう。
また葺き替え工事では既存屋根の撤去が必要です。
撤去では解体するのに埃や騒音、振動などが発生するため、近隣への配慮も忘れてはいけません。
屋根の葺き替え工事を成功させるポイント
費用がかかり大掛かりな工事となる葺き替え工事は、誰でも失敗したくないと考えるでしょう。
ここでは葺き替え工事を成功させるポイントをいくつか紹介しています。
工事を検討の際にお役立て下さい。
業者に屋根を診断してもらう
まずはどういった工事が必要なのかを業者に診断してもらいましょう。
劣化症状によって、必要な工事が変わってくるためです。
屋根はご自身で確認するには転落の危険が伴い、非常に危険なため、必ず専門的な知識をもった業者に依頼するようにしてください。
よく見られる劣化症状としては下記のようなものがみられます。
- ひび割れ
- 色褪せ
- カビ・コケの発生
- 雨漏りによるシミ
- 棟板金のずれ
- 木材の腐食
色褪せやカビ・コケの発生であれば、塗装で十分という場合もありますが、表面だけでなく総合的な判断をしてもらうことで、正しいメンテナンス方法を選択できます。
仕上がりをイメージして屋根材を選ぶ
屋根材は種類や色が豊富です。
それぞれの屋根材ごとに質感や特徴が大きく異なります。
ご自宅の屋根をイメージしながら最適な屋根材を選ぶことは、満足できる葺き替え工事のポイントの一つです。
施工業者を見極める
葺き替え工事は職人の経験や技術で仕上がりに差がでることもありますので、施工業者は慎重に選ぶ必要があります。
施工直後は美しく仕上がっていたとしても、質が悪い工事の場合には早い段階で雨漏りや屋根材の割れなどの施工不良が起きてしまう可能性があります。
過去の実績や近隣での評判などを踏まえ、担当者とよく話をして優良業者を見極めるようにしましょう。
葺き替えにおすすめの屋根材
近年注目のおすすめの屋根材がガルバリウム鋼の屋根材です。
1番のメリットは軽さです。
瓦屋根と比べると10分の1、スレート屋根と比べても4分の1程度の重さで、耐震性の向上が見込まれます。
スレート屋根より少し価格が高くなりますが、耐用年数はスレート屋根よりも長いためコストパフォーマンスは悪くありません。
金属屋根ではありますが、昔から使われていたトタン屋根と比べると4倍の防錆性があるため、塩害が心配な沿岸地域でも使用することができます。
葺き替え工事で選べない屋根材とは?
既存屋根の種類や建物の構造によっては、希望の屋根が選べないこともあります。
ポイントとなるのは屋根材の重さです。
既存の屋根が瓦の場合には、瓦の重さに耐えられる構造で建てられているため、どの屋根材でも選択することができます。
しかし、それ以外の建物で既存の屋根より重たい屋根材を選択したい場合には、建物の構造上難しいことが少なくありません。
またデザインとしては瓦屋根が気に入っていても、「瓦屋根は重くて耐震性が低い」という懸念から、軽い別の屋根材を検討される方もいらっしゃいます。
近年普及している軽量の瓦を選択すれば屋根全体の重量を抑えることができますし、同じ瓦であっても以前は主流だった「土葺き工法」から、「から葺き工法」へと工法を変更することでも屋根を軽くすることができます。
瓦から瓦への葺き替えであっても耐震性を向上させることもできる可能性がありますので、業者に確認してみるといいでしょう。
下記の表は新しい屋根材を選ぶ場合の目安になります。
既存屋根材 | 新規屋根材 | |||
瓦 | スレート | アスファルトシングル | 金属 | |
瓦 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
スレート | × | ◯ | ◯ | ◯ |
アスファルトシングル | × | × | ◯ | ◯ |
金属 | × | × | × | ◯ |
屋根の葺き替え工事の時期・メンテナンススケジュール
建物を守るためには必要なタイミングで葺き替え工事をしなければなりません。
何年を目処に葺き替え工事を検討したらいいのでしょうか。
屋根の葺き替え工事の時期
メンテナンス時期は屋根の種類によって変わってきます。
屋根材の耐用年数がそれぞれ違っていることがその理由です。
塗装などで適切なメンテナンスを行なっていたとしても、耐用年数が過ぎれば十分な防水性能は保てません。
下記の表を参考にメンテナンスの時期を検討しましょう。
>
既存屋根材の種類 | 葺き替え工事の目安 |
---|---|
瓦 | 20~60年 |
スレート | 10~35年 |
アスファルトシングル | 20~40年 |
トタン(瓦棒) | 6~20年 |
屋根の葺き替え工事のメンテナンススケジュール
屋根のメンテナンスとしては、下記のような長期スケジュールが一般的です。
一度葺き替え工事を行えば、屋根は新築時と同様の性能を取り戻し、築年数はリセットして考えることができます。
築年数 | 工事内容 |
---|---|
10年目 | ・屋根塗装 ・屋根補修 ・コーキング工事 |
20年目 | ・屋根塗装 ・状態に応じて屋根葺き替えまたは屋根カバー工事 |
30年目 | ・屋根葺き替え工事または屋根カバー工事 |
屋根の葺き替え工事の流れ
屋根の葺き替え工事は屋根塗装やカバー工法と比べても、工期が長くなります。
屋外の工事なので、工事期間中にずっと在宅している必要はありませんが、スケジュールを把握しておくとスムーズに工事が進むでしょう。
工程は下記のようになります。
仮設足場の設置
既存屋根材の解体・撤去
野地板増し張り
ルーフィング敷設
屋根材の張り付け
屋根板金取り付け
足場解体〜葺き替え工事完了
仮設足場の設置
高所での作業となる葺き替え工事は、必ず足場の設置が必要です。
また傾斜が大きい場合には、通常の足場に加えて屋根用の足場を設置します。
既存屋根材の解体・撤去
はじめに既存の屋根材を解体します。
屋根材の下に敷かれているルーフィングもすべて撤去するため、野地板の劣化状況も確認できます。
野地板増し張り
野地板が劣化して腐食している状態だと、屋根を葺き替えても不具合が起きてしまうため、必ず補修を行います。
12mmの合板を使用し、野地板を張り直します。
ルーフィング敷設
屋根材に目が行きがちですが、雨漏りを防ぐ重要な役割を果たしているのが、ルーフィングと呼ばれる防水シートです。
屋根材を新しくしてもルーフィングが劣化していたり、破損していたりすれば雨漏りにつながります。
屋根材より耐用年数が長いものを選ぶといいでしょう。
屋根材の張り付け
選んだ屋根材を張り付けていきます。
屋根板金取り付け
屋根板金とは屋根の周辺部分に使用する金属板です。
主に「水切り板金」「棟板金」「谷板金」がありますが、風などで剥がれやすい部分になりますので、丁寧に施工します。
足場解体〜葺き替え工事完了
仕上がりに問題がなければ施工完了となります。
自身の目で確認するのは危険が伴いますので、業者に写真撮影してもらい確認するようにしましょう。
屋根の葺き替え工事に使える補助金とは?
屋根の葺き替え工事は高額になりがちなため、少しでも負担を減らしたいと考えるのではないでしょうか。
自治体によっては屋根の葺き替えに補助金がでることがあります。
ただしどんな工事でも良いわけではありません。
遮熱性の高い屋根材を使用することで室内の温度上昇を抑え、無駄な冷暖房による二酸化炭素の排出を抑えることができるなど、省エネ効果が見込まれる工事であれば、補助金対象となる場合が多いです。
また屋根を軽量化することで耐震性が向上する場合も対象となる可能性が高くなります。
細かい条件は自治体ごとに決められているので、屋根の葺き替え工事を検討するのであれば、お住まいの役所に問い合わせてみるといいでしょう。
屋根の葺き替え工事は確認申請が必要?
屋根の葺き替え工事をする際に、建築確認申請が必要かを悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
地域によって細かな規定やルールが違う場合もありますが、多くの戸建住宅が当てはまる第4号建築物の場合には、一般的に確認申請は不要です。
第4号建築物とは、延面積が500㎡以下の2階建て以下の木造住宅などが該当します。
第1〜3号建築物に該当する共同住宅や非木造住宅、3階建以上の住宅などの場合には、屋根のリフォーム面積が半分を超える場合には、申請が必要になる可能性があります。
施工業者が把握している可能性は高いですが、念の為ご自身でも確認してみると安心です。
まとめ
屋根の葺き替え工事についてまとめると、
- 屋根の葺き替え工事とは、既存の屋根を解体撤去し新しい屋根を作る工事
- 30坪程度の戸建て住宅の場合の費用目安は、150〜200万円程度
- 工期は6〜15日程度
- 葺き替え工事が必要なのは、
- ひどい雨漏りや雨漏りなどで下地が腐食している場合
- 屋根の劣化が激しい場合
- 耐用年数を超えている場合や、メンテナンスが行われていない屋根
- 葺き替え工事のメリットは耐用性・耐震性・美観の向上
- 葺き替え工事のデメリットは費用が高額で工期も長くかかること
- 成功させるためには専門家に屋根の状況を診断してもらい、適切な工事をすることが大切
- おすすめの屋根材は軽くて耐用年数も長いガルバリウム鋼製
- 軽い屋根材から多い屋根材への吹き替えは難しい
- 使用している屋根材にもよるが、新築から20〜30年程度で葺き替え工事を検討するべき
- 省エネや耐震が見込まれる葺き替え工事は、補助金の対象となることがある
となります。
葺き替え工事は最も有効なメンテナンス方法です。
葺き替え工事の基本知識を備えて、後悔のない葺き替え工事を行なってください。