屋上防水の劣化症状の種類
2024/06/20
屋上の防水層は、建物を雨や湿気から守る重要な役割を担っています。
しかし、経年劣化や施工不良などにより、様々な劣化症状が現れる可能性があります。
本記事では、屋上防水工法の種類ごとに発生しやすい劣化症状について解説します。
早期発見と適切な対策が重要となる劣化症状を確認しましょう。
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アスファルト防水の劣化現象例
アスファルト防水は、安価で施工性に優れる反面、耐久性に課題があります。
主な劣化現象は以下の通りです。
保護塗料の減耗
紫外線の影響で保護塗料が徐々に減耗し、防水層が露出する。
保護塗料は熱可塑性を有するため、日射の影響で徐々に減少していきます。
一般社団法人日本建築防水協会の調査では、5年程度で塗料の減耗が顕著になるとされています。
東京都内の某ビル(竣工後10年経過)の屋上では、保護塗料がほとんど消失し、アスファルト層が露出した状態となっていました。
防水層の膨れ
防水層下の空気が膨れを引き起こし、防水性能が低下する。
アスファルトの熱劣化により気泡が発生し、その空気が防水層下に溜まると膨れが生じます。
公益財団法人建築保全センターの報告によると、防水層の膨れは雨漏りにつながる主因の一つです。
神奈川県の集合住宅で、屋上防水層に直径約30cmの膨れが複数発生していました。
散水検査の結果、膨れ部分から雨漏りが確認されました。
防水層の口開き
伸縮によりアスファルト防水層に亀裂が入り、そこから雨水が浸入する。
温度変化などで防水層が伸縮を繰り返すと、防水層にひび割れ(口開き)が発生しやすくなります。
国土交通省の資料によれば、防水層の口開きは雨漏りの主因の約30%を占めています。
山梨県の工場で、屋上防水層の伸縮部分に幅約5mmの口開きが確認され、その部分から内部に雨水が浸入していました。
アスファルト防水保護コンクリート仕上げの劣化症状例
アスファルト防水の上にコンクリート保護層を設けた工法では、次のような劣化症状が見られます。
ひび割れ
コンクリート保護層にひび割れが入ると、そこから雨水が浸入し劣化が進行します。
コンクリートは乾燥収縮によりひび割れが発生しやすく、その割れ目から水分が浸透すると、内部の鉄筋が錆び膨張してひび割れが拡大します。
一般社団法人プレキャストコンクリート工業会の調査では、10年程度でコンクリートにひび割れが見られるケースが多いとされています。
大阪市内の集合住宅(竣工後15年経過)では、屋上コンクリート保護層に幅2~5mmのひび割れが多数発生しており、そのひび割れ部分から雨漏りが確認されました。
伸縮目地の突出
コンクリートの伸縮によって目地部分が突出し、防水層を損傷させる。
温度変化などでコンクリートが伸縮を繰り返すと、目地部分にずれが生じ、防水層を押し上げて損傷させます。
国土交通省の調査によると、伸縮目地の劣化は雨漏りの主因の15%を占めるとされています。
神奈川県の工場で、屋上コンクリート保護層の伸縮目地部分が5cm以上も突出しており、その部分のアスファルト防水層が破れていました。
防水層の押出し
コンクリートの膨張によって防水層が押し上げられ、雨水の浸入経路となります。
コンクリートの中の鉄筋が錆び膨張すると、防水層を押し上げて変形させます。
一般財団法人日本建築防水工事技術協会の報告書では、防水層の押出しが雨漏りの原因となるケースが多いと指摘されています。
東京都内の高層ビルで、屋上コンクリート保護層の一部が膨らみ、そこからアスファルト防水層が数cm押し上げられた状態となっていました。
塩化ビニールシート防水の劣化症状例
塩化ビニールシートを用いた防水工法では、以下のような劣化症状が発生しがちです。
しわの発生
シートにしわが発生すると、そのしわ部分から雨水が浸入しやすくなります。
塩ビシートは伸縮性に乏しいため、温度変化などで伸び縮みを繰り返すと、しわが発生しがちです。
しわができた部分は防水性が低下します。
一般社団法人日本防水工事業協会の調査では、しわの発生が塩ビシート防水の主な劣化要因とされています。
愛知県の物流センターの屋上では、塩ビシート防水層に波打ったようなしわが多数発生しており、散水試験の結果そのしわ部分から雨漏りが確認されました。
ディスクの浮き
固定ディスクが浮いた状態になると、シートとの密着性が失われ雨水が浸入します。
塩ビシートの固定は、コンクリート面にアンカーディスクを打ち込んで行います。
ディスクが浮くと、シートとの間に隙間ができ、そこから雨水が浸入する可能性があります。
一般財団法人日本建築防水協会の報告書によると、ディスクの浮きは塩ビシート防水の主な劣化事例の一つです。
東京都内の事務所ビルで、屋上の塩ビシート防水層のディスクが一部浮いた状態になっており、その箇所から雨漏りが発生していました。
シート破断
シートに亀裂や穴が開くと、そこから直接雨水が浸入します。
加熱による熱劣化や衝撃などによって、シートに破れ目ができると防水機能が著しく低下します。
一般社団法人日本建設業連合会の調査によると、シートの破断は防水層の致命的な劣化現象の一つです。
新潟県の工場で、塩ビシート防水層に長さ約1mの亀裂が入っていました。
散水試験を行ったところ、その亀裂部分から雨水が流れ込む現象が確認されました。
ゴムシート防水の劣化現象
ゴムシート防水も、シート防水の一種であり、以下のような劣化症状が見られます。
しわの発生
ゴムシートにしわができると、そのしわ部分から雨水が浸入しやすくなります。
ゴムシートは弾力性があるものの、温度変化による伸び縮みが繰り返されると、しわが発生します。
しわができた箇所は防水性が低下するため、雨漏りの原因になります。
一般社団法人日本建築防水協会の資料によると、しわの発生はゴムシート防水の主な劣化事例です。
福岡県のマンションで、屋上のゴムシート防水層にしわが多数発生しており、散水検査の結果そのしわ部分から雨漏りが確認されました。
シート破断
ゴムシートに亀裂や穴が開くと、そこから直接雨水が浸入します。
熱や紫外線の影響で劣化が進行したり、施工時の損傷があると、シートに破れ目ができ防水機能が失われます。
一般社団法人リフォーム建築相談センターの報告書では、シート破断は最も深刻な劣化症状の一つとされています。
静岡県の工場で、屋上のゴムシート防水層に長さ約50cmの亀裂が入っていました。
散水検査を行ったところ、その亀裂部分から雨水が流れ込む様子が確認されました。
シートの口開き
ゴムシートと下地の接合部分が開くと、そこから雨水が浸入する恐れがあります。
温度変化によるシートの伸縮で、シートと下地の接合部分にずれが生じると、その隙間から雨水が浸入しがちです。
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会の調査では、シートの口開きが主な雨漏り原因の一つになっています。
岐阜県の集合住宅で、屋上のゴムシート防水層と伸縮目地の間に最大5cmの隙間ができており、そこから雨漏りが発生していました。
ウレタン塗膜防水の劣化現象
ウレタン塗膜による屋上防水では、以下のような劣化現象が見られがちです。
チョーキング現象
ウレタン塗膜表面に白っぽい粉状のチョーキングが発生すると、防水性が低下します。
ウレタン塗膜は、紫外線や大気中の二酸化炭素などの影響で表面が劣化し、粉状のチョーキング現象が起きます。
チョーキングが進むと防水性が損なわれます。
一般社団法人日本建築防水協会の資料によると、チョーキングはウレタン塗膜の代表的な劣化症状です。
広島県の商業施設で、屋上のウレタン塗膜防水層の表面が白っぽくざらついた状態になっており、チョーキングが発生していることがわかりました。
塗膜の減耗
塗膜が徐々に薄くなり減耗すると、最終的に下地が露出し雨水の浸入経路となります。
ウレタン塗膜は、紫外線や酸化によって徐々に劣化・減耗が進行します。
国土交通省の調査によると、塗膜の減耗は屋上防水の主な劣化要因の一つです。
大阪府の工場で、竣工10年を過ぎた頃からウレタン塗膜防水層の塗膜減耗が目立つようになり、最終的には床面の一部が露出する状態になりました。
塗膜の破断
塗膜に亀裂が入ると、その部分から雨水が直接浸入する恐れがあります。
温度変化による伸縮、振動、局所的な衝撃などにより、ウレタン塗膜に亀裂が発生します。
一般社団法人日本建築防水工事業協会の報告書によれば、塗膜の破断は最も深刻な劣化事例です。
埼玉県の病院で、屋上防水のウレタン塗膜層に幅約5mmの亀裂が入っており、その部分から内部に雨水が浸入していることが確認されました。
シングル葺きの劣化症状
シングルを使った屋根防水工法では、主に以下の劣化症状が見られます。
シングル材の砂落ち
シングル材の表面から砂が剥がれ落ちると、防水性と耐久性が低下します。
屋外に曝された面の砂が風雨で流失すると、下地であるアスファルトが露出します。
国土交通省の資料によると、砂落ちはシングル防水の最も一般的な劣化症状とされています。
山口県の倉庫で、屋根のシングル防水層から砂が流失し、一部がアスファルト層の露出した状態となっていました。
シングル材の破断
シングル材に亀裂や穴が開くと、そこから雨水が直接浸入する危険があります。
熱や紫外線による劣化、乾燥収縮、強風の影響などでシングル材に破れ目ができると、防水性能が著しく低下します。
一般社団法人リフォーム建築センターの調査では、破断はシングル防水の致命的な劣化事例とされています。
長崎県の工場で、屋根のシングル葺き部分に長さ約1mの亀裂が入っており、散水試験を行うとその箇所から雨水が浸入していることが確認されました。
シングル材の欠損
シングル材が一部欠損すると、その箇所から雨水が自由に浸入します。
強風や落下物の衝撃などによって、シングル材が剥がれ落ちる欠損が生じると、そこから雨水が簡単に侵入できるようになります。
一般社団法人日本建築士会連合会の資料では、シングル材の欠損は深刻な劣化症状の一つとされています。
福島県の倉庫で、屋根のシングル防水層の一部が約1m2にわたって剥がれ落ち、その部分から内部に雨水が浸入していることが確認されました。