外壁塗装はアスベスト事前調査が必要?塗装工事前に知っておきたいこと
2024/06/20
外壁塗装は、建物の美観を保つだけでなく、建物を風雨から守る重要な役割を果たしています。
しかし、古い建物の外壁には、アスベストが使用されている可能性があります。
アスベストは、健康に重大な影響を及ぼす可能性のある物質であり、外壁塗装を行う際には、アスベストの有無を確認することが重要です。
アスベストの危険性や調査の必要性について理解することは、施主にとって重要な責務といえます。
本記事では、アスベストの危険性や、外壁塗装におけるアスベスト調査の必要性、調査の手順などについて詳しく解説します。
外壁塗装を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
アスベストとは?
アスベストは、天然に産する繊維状のケイ酸塩鉱物の総称です。
「石綿」とも呼ばれ、絹のような光沢を持つ柔らかい繊維状の物質です。
耐熱性・耐薬品性・絶縁性に優れているため、建築材料や工業製品などで使用されていました。
日本では、1970年代から2000年代にかけて建築材料に大量のアスベストが使用されており、外壁材・屋根材・床材・配管材などのさまざまな建材にアスベストが含まれていました。
しかし、アスベストの繊維は非常に細かく、肺に吸入されると健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。
2006年にアスベストの使用が全面的に禁止されましたが、それ以前に建てられた建物には、アスベストが残っている可能性があります。
アスベストにはクリソタイル・アモサイト・クロシドライトなどの種類があり、クリソタイルは蛇紋石系のアスベストで最も多く使用されています。
アスベストは、肺がんや中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こす可能性があります。
アスベストの繊維が肺に吸入されると繊維が肺に刺さり、長い年月をかけて炎症や線維化を引き起こし、肺がんや中皮腫などの病気を発症する可能性があります。
肺がんは、喫煙などの他の要因でも発症しますが、アスベストへの曝露は肺がんのリスクを高めます。
喫煙とアスベストへの曝露の両方がある場合は、肺がんのリスクが極めて高くなるとされています。
中皮腫は胸膜や腹膜などの中皮細胞にできるがんで、ほとんどの場合がアスベストへの曝露が原因とされており、非常に予後が悪く、治療が難しいです。
アスベストによる健康被害は、曝露から発症までの期間が非常に長いことが特徴で、曝露から20〜40年経過してから発症することもあります。
過去にアスベストを吸入した方は、長期的な健康管理が必要です。
また、アスベストは一度肺に吸入されると体外に排出されにくいため、少量の曝露でも健康被害を引き起こす可能性があります。
そのため、アスベストを含む建材を取り扱う際には、細心の注意が必要です。
外壁塗装ではなぜアスベスト調査が必要?
外壁塗装を行う際には、アスベストの有無を確認することが重要です。
アスベストを含む建材を塗装工事で剥がしたり切断したりすると、アスベストの繊維が飛散し、作業者や周辺の人々に健康被害を及ぼす可能性があります。
特に古い建物の外壁には、アスベストを含む建材が使用されている可能性が高いため、注意が必要です。
1970年代から2000年代に建てられた建物は、アスベストが使用されている可能性が高く、アスベストの有無を確認せずに塗装工事を行うと、アスベストの繊維が飛散して健康被害を引き起こす恐れがあります。
例えば、外壁の剥がし作業・補修作業・高圧洗浄などを行う際、繊維が飛散する可能性があります。
また、アスベストが飛散した場合、作業者だけではなく周辺の住民や通行人なども曝露される可能性があります。
アスベストによる健康被害は、曝露から発症までの期間が長いため、事前の調査と対策は欠かせません。
そのため、外壁塗装を行う前に、アスベストの有無を確認するための調査が必要です。
調査によってアスベストが含まれていることが判明した場合は、適切な対策を講じる必要があります。
外壁塗装でアスベストの確認が必要な工事
外壁塗装では、外壁材にアスベストが含まれているかチェックが必要な場合があります。
以下のような工事では、事前に確認が必要です。
外壁の剥がし工事
古い塗膜を剥がす際に、アスベストを含む建材が露出する可能性があります。
特にモルタル層まで剥がす場合は、アスベストが含まれている可能性が高いため、注意が必要です。
外壁の補修工事
ひび割れや欠損部分を補修する際に、アスベストを含む建材を切断したり削ったりする可能性があります。
そのため、補修材料の選定や施工方法にも注意が必要です。
外壁の張り替え工事
古い外壁材を撤去して新しい外壁材を張り付ける際、アスベストを含む建材を取り扱う可能性があります。
撤去する外壁材の種類や施工方法によっては、アスベストが飛散するリスクが考えられます。
高圧洗浄工事
高圧洗浄機を使って外壁を洗浄する際、アスベストを含む建材が剥がれや飛散の可能性があります。
使用時の圧力・水量・洗浄方法など、高圧洗浄機の取り扱いにも注意が必要です。
これらの工事を行う際には、事前にアスベストの有無を確認し、適切な対策を講じる必要があります。
アスベストが含まれている場合は、専門業者の作業によって適切な除去や封じ込めを行うことが重要です。
外壁塗装でアスベストの確認が不要な工事
外壁塗装では、アスベストの確認が必要な作業もありますが、なかには不要な作業もあります。
以下のような工事では、アスベストの確認が不要です。
塗装工事のみの場合
既存の外壁材を剥がしたり切断したりしない場合は、アスベストの確認が不要な場合があります。
ただし、塗装材料の選定には注意が必要です。
アスベストを含まない建材の場合
2006年以降に建てられた建物やアスベストを含まない建材が使用されている場合は、アスベストの確認が不要な場合があります。
ただし、建築年代や使用建材の情報が不確定な場合もあるため、入念な確認が必要です。
露出していない部分の工事
外壁材の内側や外壁材と構造体の間など、アスベストが露出していない部分の工事では、確認が不要なことがあります。
しかし、工事の範囲や方法によっては、アスベストが飛散するリスクがあるため、事前の確認はしっかり行います。
確認が不要な場合でも、アスベストが使用されている可能性がゼロではないため、注意が必要です。
不明な点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
外壁塗装におけるアスベスト調査の手順
外壁塗装におけるアスベスト調査は、以下のような手順で行われます。
1. 建物の調査
建物の建築年代や使用されている建材は、調査の対象です。
アスベストが使用されている可能性が高い建物は、1970年代から2000年代に建てられた建物です。
図面や仕上げ表などから、使用されている建材を確認します。
2. 目視調査
外壁材の劣化状況やアスベスト使用の疑われる建材は、目視で確認します。
対象の建材は、スレート板・けい酸カルシウム板・パーライト板などがあります。
3. サンプリング
外壁材の一部をサンプルを採取します。
サンプルは、アスベストの含有量を調べるために専門の検査機関に送られます。
また、サンプリングはアスベストの飛散を防ぐために、専門の技術者が行います。
4. 分析
サンプルを分析し、アスベストの含有量を調べます。
アスベストの含有量が0.1%以上の場合は、アスベストを含む建材としての扱いが必要です。
分析は、偏光顕微鏡や電子顕微鏡などを用いて行われます。
5. 報告書の作成
調査の結果をまとめた報告書を作成します。
報告書には、アスベストの有無・含有量・対策の必要性などが記載されます。
報告書は、施主に提出して説明を行われます。
調査の結果、アスベストが含まれていることが判明した場合は、適切な対策を講じる必要があります。
対策の方法は、アスベストの種類・含有量・建物の状況などによって異なりますが、アスベストを含む建材の除去や封じ込めなどです。
またアスベスト調査は、専門的な知識と技術が必要なため、専門の業者に依頼することが望ましいです。
適切に行うことで、外壁塗装におけるアスベストのリスクを最小限に抑えましょう。
外壁塗装のアスベスト調査を行うためには、一定の知識と技術が必要です。
そのため、アスベスト調査を行う者は、次のような資格を持っていることが望ましいとされています。
建築物石綿含有建材調査者
一般社団法人日本アスベスト調査診断協会が認定する資格です。
アスベストの基礎知識・調査方法・関連法規などを学び、建築物のアスベスト調査に必要な知識と技術を習得できます。
建築物石綿飛散防止対策監督者
公益社団法人日本建築士会連合会が認定する資格です。
アスベストの飛散防止対策に関する知識や技術を学ぶことで、アスベストの除去や封じ込めなどの対策工事の監督に必要な知識と技術を習得できます。
石綿作業主任者技能講習
厚生労働省が定める講習です。
アスベストの危険性・関連法規・保護具の使用方法などを学び、アスベストを扱う作業に必要な知識と技術を身につけられます。
これらの資格を持つ方は、アスベストの調査や対策に関する専門的な知識を持っているため、適切な調査や対策を行うことができます。
ただし、資格を持っていない者でも、アスベスト調査を行うことは可能です。
しかし、アスベストの危険性や関連法規を十分に理解し、適切な調査方法を身につける必要があります。
メンテナンス業者の選び方
外壁塗装を行う際は、アスベスト調査を適切に行えるメンテナンス業者を選ぶことが重要です。
メンテナンス業者を選ぶ際は、以下のような点に注意しましょう。
アスベスト調査の実績
アスベスト調査の実績があるか確認します。
実績のある業者は、適切な調査を行うことができます。
特に、同種の建物での調査実績があるとよいでしょう。
調査技術者の資格
調査技術者が、建築物石綿含有建材調査者などの資格を持っているか確認します。
資格を持つ技術者は、アスベストに関する専門知識と技術を持っているため、適切な調査を行うことができます。
調査方法の説明
調査方法について、わかりやすく説明してくれるか確認します。
適切な調査方法を提案してくれる業者を選びましょう。
また、調査の範囲・方法・費用などを明確に示すことが求められます。
関連法規の知識
アスベストに関する関連法規について、十分な知識を持っているか確認します。
関連法規を遵守し、適切な手続きを行ってくれる業者を選ぶことが重要です。
安全管理体制
アスベスト調査や対策工事において、安全管理体制が整っているか確認します。
作業員の安全確保や周辺環境への配慮など、適切な安全管理を行ってくれる業者を選びましょう。
これらの点に注意し、信頼できるメンテナンス業者を選ぶことが重要です。
複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討することをおすすめします。
また、アスベスト調査や対策工事は、専門性の高い作業であるため、価格以外にも技術力・実績・安全管理体制なども総合的に評価して業者を選ぶことが大切です。
まとめ
外壁塗装を行う際は、アスベストの有無を確認するための調査が重要です。
アスベストは、肺がんや中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こす可能性があるため、適切な対策を講じる必要があり、
特に1970年代から2000年代に建てられた建物は、アスベストが使用されている可能性が高いです。
外壁の補修・張り替え・剥がし工事などを行う際は、事前にアスベストの有無を確認しましょう。
また、アスベスト調査は、建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ者が行うことが望ましいです。
調査の結果、アスベストが含まれていることが判明した場合は、適切な対策を講じる必要があるため、技術や知識を持つ専門家へ相談すると安心です。
調査技術者の資格・調査方法の説明や対策の提案などをしっかり行ってくれるか確認し、信頼できる業者を選びましょう。
アスベストは、目に見えない脅威ですが、適切な調査と対策を行えば、健康被害を防げます。
外壁塗装を行う際は、アスベストの危険性を理解し、適切な対応を心がけましょう。