マンションの建物診断(劣化診断)とは?流れや費用についても解説!
新築10年前後で行なわれる建物診断は、大規模修繕工事の計画を立てる上で欠かせません。
といっても始めて建物診断を行なう場合、「どんな診断なのか良く分からない」というかたも多いようです。
そこで今回は、マンションの建築診断について解説していきます。
建物診断の流れや費用相場についてもご紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
建物診断の目的
マンション(建物)の不具合や劣化状況を調査する建物診断。
建物診断は、以下の目的で行なわれます。
・建物の不具合を見つけるため
・資産価値の維持・向上を図るため
・具体的な修繕計画を立てやすくするため
・修繕のための図面や仕様書を作成するため
・修繕内容や工法、使用材料を検討するため
大規模修繕は長期修繕計画に基づいて行なわれますが、建物診断を行なった後に長期修繕計画の見直しが必要になることが多いです。
建物診断の目的について、以下でさらに詳しく解説していきます。
大規模修繕工事の時期を検討するため
大規模修繕工事は約16年に一度行なうのが一般的です。
しかしこれはあくまでも平均値。
マンションの劣化状況によって大規模修繕工事の時期は前後します。
例えば海の近くにあるマンションや、降雪量の多い地域にあるマンションは劣化が進みやすい傾向があります。
資金面なども考慮しながら、大規模修繕工事の時期を探っていきましょう。
建物の劣化状況を把握するため
大規模修繕工事では外壁や屋上、エントランス、バルコニーなどの共用部分を中心に、マンション全体を広く修繕します。
ひび割れがある箇所やタイルが浮いている箇所などをしっかり把握することにより、適切な修繕工事が行なえます。
おおよその工事費用を算出するため
やはり実際の建物の状況が分からなければ、正確な工事費用は算出できません。
そこで建物診断が役に立ちます。
工事費用が足りない場合は追加で住人から一時金を徴収したり、金融機関から借り入れたりする必要がありかも知れませんからね。
今回だけでなく次回の大規模修繕工事も見据えて、資金計画を建てることが大切です。
長期修繕計画を見直すため
建物診断は、長期修繕計画を見直すための良い機会になります。
「修繕積立金は今の額で良いのか」「過去に立てた修繕計画とのズレはないか」といったことも確認するする必要があるでしょう。
建物診断の内容は?
建物診断では、以下のことを行ないます。
・給排水管の劣化診断
・外壁タイルの打診調査
・コンクリートの中性化試験
・シーリングの劣化状況の調査
・セキュリティなど快適性の診断
劣化が発生する傾向を把握するために、マンションの完成図や仕様書、修繕履歴などのチェックも行ないます。
建物診断では目視や触診、打診を使って、マンションに不具合が無いかを検査します。
劣化状況によっては専門機器を使って検査することもありますよ。
さらにマンション住人へのアンケートも実施します。
建物診断で発見されなかった不具合が見つかるケースもあるので、アンケートは必ず行ないましょう。
マンション住人の、大規模修繕へ向けての意識も高まりやすいですよ。
診断項目は4種類
業者によっても異なりますが、診断項目には「経年劣化診断」「配管劣化診断」「耐震診断」「収益性診断」といった4種類があります。
経年劣化診断
経年劣化診断では、建物の劣化状況を目視や触診で確認します。
外壁や屋上防水、鉄部などを調査します。
タイルの浮きや剥離、コンクリートの劣化状況、コンクリート内部の鉄骨の錆びの状況、過去の施工ミスなどをチェックしますよ。
配管劣化診断
配管劣化診断とは、配管内部を内視鏡や超音波、X線などを使って調査することを言います。
肉眼では分からない劣化部分や腐食部分が分かります。
場合によっては配管を縦に2分割して、腐食状況を確認するサンプリング調査を行なうこともあります。
耐震診断
日本の耐震基準は年々厳しくなっています。
とくに古いマンションの場合は、どれくらいの大きさの地震に耐えられるのかを知るために、耐震診断が必要になることがあります。
収益性診断
マンションの今の資産価値はどのくらいか、ということも建物診断で分かります。
新築時のように資産価値が高ければ、入居者の増加が期待できるでしょう。
建物診断の流れ(進め方)
建物診断は、以下のような流れで行なわれます。
①業者との打ち合わせ
②予備診断
③現地調査
④建物診断(本調査)
⑤報告書の提出
⑥理事会、説明会
⑦アフターフォロー
①業者との打ち合わせ
建築診断会社や設計事務所など、建築診断を行なう業者との打ち合わせを行ないます。
建築診断にかかる費用の概算や、具体的な検査内容について確認します。
②予備診断
まずは目視や、マンション住人へのアンケートなどを通して、簡易的な建物診断を行ないます。
マンションの完成図や仕様書、長期修繕計画などの書類の確認も行ないます。
③現地調査
本格的な建物診断を行なう前に、目視や触診、打診などでマンションの劣化状況を把握しておきます。
④建物診断(本調査)
ここでようやく詳細な建物診断が行なわれます。
建物診断は依頼内容に沿って行なわれます。
必要があればコンクリートの中性化試験や、バルコニーへの立ち入り調査なども行なわれます。
⑤報告書の提出
建物診断が終了した後は、業者が建物診断報告書を作成し、マンション側へ提出します。
⑥理事会、説明会
マンションの理事会に建物診断の内容を報告します。
またマンション住人への説明会を開催して、大規模修繕の必要性について理解してもらえるよう促します。
⑦アフターフォロー
業者によっては、大規模修繕についてのアドバイスも行なってくれる場合がありますよ。
建物診断の費用はいくら?
建物診断では、以下のような費用がかかります。
小規模マンション(30戸以下) |
20~40万円 |
中規模マンション(50~100戸) |
30~80万円 |
大規模マンション(200戸以上) |
50~100万円 |
ただし上記はあくまでも目安です。
業者の違いや、内容の違いによって費用は前後します。
建物診断の注意点
ここでは、建物診断での注意点をご紹介していきます。
不要な調査もある
「どうせなら建物全部をまとめて調査してしまおう」と思いがちですよね。
しかし、全てを業者任せにしていると不要な調査をされることがある、ということは覚えておきましょう。
例えば1回目の大規模修繕工事のために建物診断をする場合、「コンクリートの中性化試験」や「タイルの引張力試験」は必要ないことが多いのです。
不要な調査を行なうと、もちろん調査費用が高くなります。
業者との打ち合わせには、「今回の大規模修繕にどんな工事が必要なのかを見極める」という意識を持って臨みましょう。
無料と有料の2種類がある
建物診断には、無料と有料の2種類があります。
無料診断
目視や触診、打診による簡易的な建物診断を行ないます。
コンクリート内部の劣化状況などを詳しく知ることは難しいです。
有料診断
コンクリート中性化試験や、給排水管内部の内視鏡調査など、詳細な診断も行ないます。
また共有部分だけでなく専有部分の診断も行なえます。
特に築年数が経過したマンションでは、有料診断を行なうと良いでしょう。
まとめ
今回の記事の内容を、以下にまとめていきます。
・建物診断で、マンションの劣化状況をチェックできる
・建物診断を行なうと、具体的な修繕計画が立てられる
・給排水管の劣化診断や外壁タイルの打診調査など、さまざまなことを行なう
・マンション住人へのアンケートも大切
・診断項目は「経年劣化診断」や「配管劣化診断」など4種類ある
・マンションの規模に合わせて20~100万円ほどの費用がかかる
・不要な調査がある場合も。業者との打ち合わせが大切
大規模修繕工事を適切に行なうには、事前の建物診断が重要です。
ぜひ今回の記事を参考に、建物診断の実施を検討してみてくださいね。