マンションの大規模修繕工事がベランダの植物に与える影響とは
2024/05/20
マンションの大規模修繕工事は外壁・屋根だけでなく、階段・廊下などの共有部分、そして各住戸のバルコニー・ベランダにも及びます。
しかしベランダに置かれた植物や個人の所有物については、どのように取り扱うべきなのでしょうか。
特に大きなものであれば、「移動や室内での保管が難しいため、やむなくベランダに置いている」という場合もあるでしょう。
また植物であれば、日光や水やりのためにベランダが最適であることも考えられます。
工事が始まったあとに、不具合やトラブルが生じてしまう事態は避けたいですよね。
そこで今回の記事では、ベランダに置かれた植物の取り扱いや、大規模修繕前にやっておくべきことなどについて詳しく解説しています。
「はじめての大規模修繕でどのような対策をすればいいかわからない」「オーナーとしてどのような点を説明すればいいのか」など、マンションにお住まいの方だけでなく管理する方にも有益な内容ですので、ぜひ参考としてお役立てください。
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大規模修繕で行われる工事の種類
まず、大規模修繕ではどのような工事が行われるのかについて、把握しておきましょう。
■仮設工事
大規模修繕の開始に先立ち「仮設工事」が行われます。
これは、作業者が安全に作業を進められる環境を整えるためのもので、大規模修繕の品質を高めるためにも重要な工程です。
マンションの周囲への足場の設置や防犯カメラの設置、資材置き場の確保、仮設トイレの設営などが行われます。
■下地補修工事
仮設工事が終わった後は「下地補修工事」が行われます。
これは下地に生じた凹凸や亀裂や欠損部分を削り取ったり、埋めたりする作業を指します。
後の工程に大きな影響を与えるので、下地補修を省くことはできません。
外壁タイルがある場合は、タイル補修工事も行われます。
■シーリング工事
外壁同士の接合部に使用されるゴム状のシーリングは、風雨や地震などから下地を保護する重要な役割を果たします。
ただし劣化するのが他の箇所よりも早く、5~10年ほどで再施工が必要です。
新しいシーリング材を充填することで建物の気密性が向上し、雨水の浸入も防げます。
■塗装工事
外壁塗装工事を行うとマンションの美観を保て、雨水や汚れから建物を守れます。
扉・外階段・メーターボックスなど、鉄部の塗装工事も行われます。
外壁塗装も鉄部塗装も、塗料を塗る前にしっかりと下地を整える作業が重要です。
■防水工事
屋上・外階段・バルコニーなど、風雨にさらされる床面には「防水工事」が必要です。
防水工事を行うことで、建物の内部構造部分へ雨水が浸入するのを防ぐことができます。
施工場所によって、さまざまな工法が用いられます。
植物の生長に欠かせないものとは
植物の生長には日光や水が必要です。
しかし大規模修繕時は建物全体が養生シートで覆われ、日光はほとんど届きません。
そのため、日光を必要とする植物の生長に大きな影響が出ます。
可能な限り、植物を日光が当たる場所に移動させることが重要です。
適切に対処しないと、日陰で育つ植物以外は元気がなくなってしまうでしょう。
特に戸数の多い大型マンションでは、工事期間が1年近くになる場合もあるので、長期にわたる対策が必要です。
また夏場に大規模修繕が行われると、建物全体がカバーで覆われて窓も開けられないため、室内は非常に暑くなります。
エアコンを用いて室温の調整を行う場合、植物に冷風が直接当たらないよう注意が必要です。
また冬場に大規模修繕が行われる場合、逆に室内は暖かくなります。
暖房による乾燥が問題となるため、湿度管理や水やりは丁寧に行いましょう。
さらに締め切られた部屋では、風通しが悪くなることによる害虫の発生リスクも高まってしまいます。
このように、植物の生長に必要な要素が、大規模修繕によりさまざまな影響を受ける恐れがあります。
植物の生長ができるだけ阻害されないよう、何らかの対策が必要です。
大規模修繕工事内容ごとの植物への影響
大規模修繕では工事内容ごとに、植物にさまざまな影響が出ます。
例えば外壁の汚れ落としには高圧洗浄機が使われますが、洗剤を使った洗浄が必要となる場合は植物が枯れてしまうケースもあるため注意が必要です。
また足場の近くでは、足場の周囲が塗料で汚れたり物が落下したりするケースもあります。
ベランダの植物がダメージを受けないように保護したり、室内に取り込んだりする必要があるでしょう。
また1階の庭付き物件の場合、地面に直接植えられ移動が難しい樹木については、別の対策が必要です。
業者によっては、植栽を避けるように足場を組むことも可能でしょう。
しかし、建物の外壁に枝が触れて塗り替えに支障がある場合や、足場設置時に障害となる場合は、枝の剪定が必要です。
樹木の種類によっては、適切な時期以外に剪定を行うと枯れてしまうこともあるため、専門家に依頼することをおすすめします。
建物と植栽の位置関係によっては、枝の剪定で工事前と同じ状態を保つことが難しい場合もあるので、この点にも注意が必要です。
あらかじめマンションの規約や工事内容を確認し、不安や疑問がある場合は工事が始まる前に解消しておくことで、安心して工事期間を過ごせるでしょう。
ベランダにある植物はどうする?
ベランダに置いてある植物は、基本的に全て室内に移動させておく必要があります。
これはベランダの床へ、防水工事が行われるためです。
ベランダの工事が行われる際には、事前に各世帯にアンケート調査を行い、工事日程を調整します。
日程が決まった後、各世帯へ植物や私物の片付けを求める通知が配られるのが一般的です。
通知を受けた世帯は、工事をスムーズに進めるためにも、工事予定日までに荷物を室内に移動させておく必要があります。
移動や撤去を行わないままにしていると工事の進捗に影響し、全体の日程が遅れたり再度工事日の調整をしたりする必要があるため、必ず期限までに片付けを行いましょう。
さらに植物の移動や撤去は、所有者自身で行わなくてはなりません。
またその際かかった費用も自己負担です。
室内に移動できない場合は、トランクルームをレンタルしたり、親戚・友人宅に預けたりなどを検討しましょう。
どうしても期日までに撤去できない時は、すぐに施工業者に連絡することが大切です。
専門業者を紹介してもらえたり、オプション料金で撤去を手伝ってくれたりするケースもあります。
工事予定日が近くなって急いで撤去しようとすると、業者の手配が難しい場合もあるため、余裕のある日程で進めましょう。
植物以外にも影響がある?
バルコニーにある私物は、基本的にすべて室内に移動させておく必要があります。
床面に敷いたタイルや人工芝などはもちろん、自身で設置した洗濯物干しも移動させましょう。
BS・CSアンテナも取り外さなければならない場合があるので、事前に施工業者や管理組合に確認しましょう。
ただし、エアコンの室外機はそのままで問題ありません。
またマンションによっては、共用部に一時的な保管スペースを設け、私物を保管できることもあります。
室内に収納できない場合や一時的な保管スペースがない場合は、植物の場合と同じようにトランクルームを利用したり、友人・知人に預けることを検討しましょう。
またマンションのバルコニーには専用使用権があるものの、共有部分です。
そのため「バルコニーの工事は行わないでほしい」ということはできません。
基本的に全戸で工事が進行するので、責任をもって私物の撤去・処分をしましょう。
大規模修繕のベランダ・バルコニー工事の前にやっておくべきこと
大規模修繕工事では、バルコニーの使用が制限されます。
以下に、大規模修繕工事の前にやっておくべきことをご紹介していきます。
■ウッドデッキ・タイル・人工芝の撤去、網戸の取り外し
ウッドデッキやタイル・人工芝は、全て撤去しておきましょう。
また処分する場合は、材質に応じた分別や処分費用も必要です。
さらに、マンションに設置されている網戸・サッシ・窓ガラスは「専用使用権がある共用部分」に該当するため、網戸は取り外しておきましょう。
網戸があると、サッシ周りのシーリング工事に支障が出る可能性があります。
また塗料が飛散して網戸の目詰まりを起こすと、網戸の機能自体が失われてしまいます。
■洗濯物を干すスペースの確保
ベランダから物干し台を撤去すると、洗濯物を干すことが難しくなります。
そのため、室内に物干しスペースも確保しましょう。
また事前に近くのコインランドリーの位置を確認しておくと、雨の日が続いた場合でも安心です。
不安な場合は施工業者へ確認
どのように備えればいいのか不安な場合は、管理組合や施工業者へ確認しておくと安心です。
些細なことであっても、不安を抱えたまま作業が進むと思わぬトラブルに発展してしまう可能性があるためです。
また管理組合や施工業者によっては、植物の仮置き場を確保してくれる場合もあります。
ただし水やりや施肥などの管理は、所有者自身で行わなくてはなりません。
そのため、迷ったり困ったりした時に適切な提案をしてくれる、信頼できる専門業者を探すことも大切です。
信頼できる専門業者を見つけるには、過去の実績や口コミを参考にすると良いでしょう。
さらに、場合によっては植物・私物の預かりサービスを利用するのも良いでしょう。
きちんと温度管理がされているトランクルームや、預かった植物を適切に育ててくれる業者もあるので、目的に合わせて検討してみましょう。
まずは大規模修繕を行う施工業者に相談し、どのように対処すれば良いのかを確認しておくことが必要です。
まとめ
マンションの大規模修繕工事では、ベランダの植物や私物に影響が及ぶ可能性があります。
事前に管理組合や施工業者へ詳細を確認し、余裕のある日程で移動や撤去などを進めておく必要があります。
今回の記事でご紹介した内容は、以下のとおりです。
・大規模修繕工事は外壁・屋根だけでなく、階段・廊下などの共有部分、そして各住戸のバルコニー・ベランダにも及ぶ
・ベランダに置かれた植物や私物については、住民自身が整理しなければならない
・大規模修繕では仮設工事・下地補修工事・シーリング工事・塗装工事・防水工事などが行われる
・大規模修繕が行われると建物全体が養生シートで覆われるため、日光はほとんど届かない
・工事内容によって、植物にさまざまな影響が出る
・ベランダに置いてある植物や私物は、全て室内か別な場所に移動させておく必要がある
・マンションのバルコニーは共有部分なので、利用が制限される
・不安な場合は管理組合や施工業者へ確認する
・適切な提案をしてくれる信頼の置ける業者探しも大切
植物の生長に影響が出る場合もありますが、適切に対処することでダメージを最低限に抑えられるよう工夫しましょう。
大規模修繕時の対応に不安がある場合は、あらかじめ管理組合や施工業者に問い合わせておくことをおすすめします。