ビルの外壁の種類や補修工事の種類と特徴を解説|外壁修繕のタイミングとは?
2024/10/28
ビルの外壁は、建物を外部環境から守り、美観を保つ重要な役割を担っています。
経年劣化や気象条件の影響により、外壁は徐々に劣化していき、適切なタイミングでの修繕や補修工事が必要となります。
外壁工事には、ALCボードの補修やタイルの張り替え、塗装の改修など、様々な種類があり、建物の状態や外壁の材質によって最適な工法が異なってきます。
また、ビルの外壁修繕は、建物の価値維持だけでなく、安全性の確保という観点からも重要です。
本記事では、ビルの外壁の種類や特徴、補修工事の種類、そして外壁修繕の適切なタイミングについて、専門家の視点から詳しく解説していきます。
建物管理者の方やビルオーナーの方に、外壁工事の基礎知識として参考にしていただければ幸いです。
ビルの外壁の種類と特徴を詳しく解説
ビルの外壁には様々な種類があり、それぞれに特徴や長所・短所があります。
建物の用途や環境に応じて、適切な外壁材を選択することが重要です。
ALCボード
ALCボードは、軽量気泡コンクリートを使用した外壁材です。
軽量で断熱性や遮音性に優れており、施工性も良好なため、多くのビルやマンションで採用されています。
ALCボードは一般的なコンクリートに比べて約4分の1の重要です。軽量で地震時の揺れを軽減することができます。
耐火性能も高いのが特徴ですが、ALCボードは衝撃に弱く、表面が傷つきやすいという弱点もあります。また、経年劣化によるひび割れにも注意が必要です。
塗装の剥がれや中性化による強度低下が課題となることもありますので、外壁材として使用する場合には、表面に保護塗装を施すなどの対策が必要です。
金属系サイディングボード
金属系サイディングは、ガルバニウム鋼板やアルミニウム、ステンレスを使用した外壁材で、表面には塗装やフッ素樹脂加工が施されています。
金属は腐食や錆に強く耐久性に優れています。表面が滑らかなため、汚れがつきににくく、メンテナンスが容易なことが特徴で定期的に洗浄するだけで美観を維持することができます。
また、多様なデザインや色彩が選択可能で、現代的な外観を実現できます。
ただし、結露対策や断熱性能の確保が重要な課題となります。
ガラス壁
ビルのガラス壁は「ガラスカーテンウォール」とも呼ばれ、一般的な窓とは異なり、高層ビル専用に開発された外壁システムです。
透明度が高く開放的な空間を実現でき、採光性に優れ、自然光を取り込むことで省エネ効果も期待できます。また、視覚的に広々とした印象を与え、ビルをスタイリッシュに演出する効果もあります。
ただし、断熱性能が低いため、夏は暑く、冬は寒くなりやすいという欠点があります。また、汚れが目立ちやすいため、定期的な清掃とシーリング材の点検・交換が重要なメンテナンス項目となります。
モルタル壁
モルタル壁は、セメント、砂、水などを混ぜ合わせたモルタルを塗って仕上げる外壁です。
モルタルは強固で耐久性が高く、長期間使用することができます。また仕上がりが美しく、デザイン性の高さから、住宅やビルなど幅広く使用されています。
しかし、経年劣化によるひび割れやはく離が発生しやすく、定期的な点検と補修が必要です。特に、雨水の浸入による劣化には注意が必要です。
タイル壁
タイル仕上げは、耐久性が高く、他の外壁材よりも長持ちします。適切にメンテナンスされていれば、50年以上も耐久することができます。
タイルは洗浄が容易で、定期的なメンテナンスが不要ですが、目地の汚れなどには注意してメンテナンスすると長期間美観を維持できます。
ただし、タイルは施工コストが高く、経年による接着力低下で剥落のリスクがあるため、定期的な浮き調査が必要です。
ビル外壁補修の必要性と適切なタイミングは?
ビルの外壁補修工事は「12年」が目安になります。
ビルの外壁は、風雨や紫外線に常にさらされているため、経年劣化によって様々な問題が発生する可能性があります。
外壁の補修の必要性を知るためには、いくつかのサインを見逃さないことが大切です。
外壁が膨れ・ひび割れが目立つ場合は、早急に補修が必要です。
また、外壁塗装の耐用年数が迫ってきたら、塗り替えを検討する時期です。
放置すると、雨漏りや躯体の腐食につながる恐れがあります。早めの補修で、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持しましょう。
ビルの外壁補修が必要な劣化のサイン
外壁の劣化は建物の美観を損なうだけでなく、雨漏りや躯体の腐食など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。
そこで重要なのが、適切なタイミングでの外壁補修です。外壁補修の必要性は、以下のサインから判断できます。
- 外壁が膨れ・ひび割れが目立つ
- 外壁塗装の塗膜が剥がれている場合
- シーリング材が劣化している場合
- タイルが欠損している場合
これらのサインが見られたら、早急に専門業者に相談することが大切です。
対処法としては、以下の2つの方法が考えられます。
- 外壁塗装の塗り替え
- 外壁タイルの張り替え
どちらの方法を選択するかは、建物の状態や予算によって異なります。専門業者に相談して、最適な方法を選択しましょう。
外壁塗装の耐用年数
外壁塗装の耐用年数は一般的に10年〜20年です。
外壁塗装の耐用年数が迫ってきたら、建物の美観を損なうだけでなく、雨漏りや建物躯体の劣化につながる可能性がありますので、塗り替えを検討する必要があります。
塗り替えをしないと、塗膜が剥がれて防水機能が低下し、雨水が内部に侵入する恐れがあります。
また紫外線による劣化で色褪せやひび割れが発生し、建物の美観を損なうことにもなります。
ビルの外壁補修工事の目的
外壁補修工事の主な目的は以下の通りです。
- ビルの美観を向上させる
- 建物の耐久性を維持する
外壁の補修工事を定期的に行うことで、ビルの美観や安全性、資産価値を維持することができ、建物を長持ちさせることができます。
ビルの美観を保つ
オフィスビルなどの商業施設は、多くの人々が行き交う場所であり、建物の外壁は第一印象を左右する重要な要素です。
特に都市部では、建物の密集化が進み、建物同士が隣接しているケースも多く、外壁の汚れや劣化が目立つと、周りの景観を損ねてしまう可能性があります。
近年、都市部では景観条例が制定されるケースが増えており、外壁を適切な状態に保つことが義務付けられている場合があります。
そのため、ビルオーナーは建物の外壁を定期的に点検し、必要に応じて補修工事を実施することが重要です。
ビルの耐久性を維持する
外壁補修工事は、建物の耐久性を維持するためにも重要な役割を果たします。
外壁には、雨風や紫外線から建物を保護する役割があり、外壁に亀裂や剥がれが生じると、雨水が建物の内部に浸入し、躯体を腐食させる可能性があります。
そのため、外壁の劣化を放置すると、建物の寿命を縮めてしまうだけでなく、大規模な修繕が必要となり、コストがかさむ可能性があります。
ビル外壁補修工事における「工事の種類」を解説
主な工事の種類は、外壁調査工事、外壁清掃、外壁下地補修工事、ビルの外壁塗装、外壁タイル工事、シーリング工事、防水工事です。
これらの工事は、建物の状態や予算に合わせて組み合わせることで、適切な外壁補修を行うことができます。
外壁調査
ビルの外壁補修工事において、最初の工程となるのが外壁調査です。この調査は、建物の外壁の状態を詳細に把握し、適切な補修方法を決定するための重要な役割を果たします。
調査方法 | 内容 |
---|---|
目視調査 | 外観からの劣化状況確認 |
打診調査 | タイルやモルタルの浮き確認 |
赤外線調査 | 漏水や断熱不良の検出 |
コア抜き調査 | 躯体の強度確認 |
外壁調査工事では、主に以下の項目を確認します。
調査内容 | 内容 |
---|---|
外壁の劣化状況 | 亀裂、剥離、膨れ、錆びなどの有無や程度を調査します。 |
外壁材の種類 | ALC、金属サイディング、モルタルなど、使用されている外壁材の種類を特定します。 |
防水性能 | シーリング材の劣化やクラックの有無を確認し、防水性能を評価します。 |
下地材の状況 | 外壁材の下地であるコンクリートやモルタルの状態を確認し、強度や腐食の有無を調査します。 |
付帯設備の状況 | 雨樋、庇、窓枠などの付帯設備の状態を確認し、補修の必要性を判断します。 |
これらの調査結果に基づいて、補修方法や使用する材料を決定し、具体的な工事計画を作成します。
外壁調査工事は、専門の調査員によって実施されます。
外壁清掃
長年の風雨や排気ガスにより、外壁には汚れやカビ、藻類が付着し、これらが放置されると建材の劣化を促進させる原因となります。
特に高層ビルでは、下層部と上層部で汚れの付き方が異なり、建物の向きや周辺環境によっても清掃方法を変える必要があります。
また、外壁材の種類によって適切な洗浄圧力や洗剤の選定も重要です。定期的な清掃により、外壁の状態を適切に保ち、建物の価値を維持することができます。
外壁清掃には、主に以下の3つの方法があります。
方法 | 内容 |
---|---|
高圧洗浄 |
高圧洗浄は、水圧の高い水を噴射して汚れを落とす方法です。 頑固な汚れや付着物を効果的に除去することができますが、洗浄圧が強いため、外壁材によっては傷つけてしまう可能性があります。 |
ケレン清掃 |
ケレン清掃は、ブラシやサンドペーパーなどを使用して汚れを擦り落とす方法です。 高圧洗浄よりも丁寧な洗浄が可能ですが、時間がかかり、費用も高くなります。 |
薬剤洗浄 |
薬剤洗浄は、専用の洗浄剤を使用し、汚れを浮かせて落とす方法です。 環境に優しい洗浄剤を使用することが多く、外壁を傷めにくいという特徴があります。 |
外壁下地補修工事
ビル外壁の下地は、外壁材を支える重要な役割を果たしています。
経年劣化や外的要因によって下地が損傷すると、外壁材の剥落や雨漏りなどの問題が発生する可能性があります。
そこで、外壁下地補修工事は、損傷した下地を補修または交換することで、外壁の耐久性と美観を回復させることを目的としています。
外壁下地補修工事の内容は、損傷の程度や下地の種類によって異なりますが、一般的には以下のような工程が含まれます。
工程 | 内容 |
---|---|
調査・診断 | 外壁の損傷状況や下地の種類を調査し、適切な補修方法を決定します。 |
ケレン作業 | 損傷した下地の表面を削り取り、汚れや錆などを除去します。 |
補修・交換 |
損傷した下地をモルタルや樹脂系材料で保守したり、新しい下地に交換したりします。 |
仕上げ | 保守箇所を平滑仕上げ、塗装や防水処理を行います。 |
ビルの外壁塗装工事
ビル外壁の補修工事にはさまざまな種類がありますが、その中でも最も一般的なのが外壁塗装の修繕です。外壁塗装は、経年劣化や紫外線などによって塗膜が剥がれたり、色あせたりすることで、建物の美観や防水性を損なってしまうため、定期的なメンテナンスが必要です。
外壁塗装の修繕内容は、基本的に以下の3つの工程に分かれます。
工程 | 内容 |
---|---|
下地調整 |
剥がれた塗膜や汚れをきれいに除去し、表面を平らにする作業です。 |
中塗り |
下地調整後に、塗料を塗り重ねる作業です。通常、2回程度塗ります。 |
上塗り |
中塗りが乾いた後に、仕上げの塗料を塗る作業です。 |
外壁塗装の修繕には、さまざまな塗料が使用されますが、近年では耐久性や耐候性に優れたフッ素樹脂塗料や無機塗料が人気を集めています。また、近年では環境に優しい水性塗料も注目されています。
外壁タイル工事
外壁タイル工事は、建物の外観を美しく保つための重要な工事です。タイルは、耐久性が高く、防水性にも優れているため、外壁材として広く用いられています。
外壁タイル工事の主な流れは、以下のとおりです。
工程 | 内容 |
---|---|
調査 | 既存の外壁タイルの状態を調査し、補修が必要な箇所を特定します。 |
仮設工事 | 足場を組むなど、作業を行うための仮設工事を設置します。 |
タイル撤去 | 補修が必要なタイルを撤去します。 |
下地補修 | タイルを撤去した部分や、ひび割れなどの破損個所を補修します。 |
タイル貼り付け | 新しいタイルを貼り付けます。 |
目地詰め | タイル目地を埋め、防水性を高めます。 |
仕上げ | タイル表面を清掃し、コーティングなどを施します。 |
撤去 | 仮設工事を撤去します。 |
外壁タイル工事の費用は、タイルの種類や施工面積、破損の程度などによって異なります。
また、工事期間は、建物の規模や破損の程度によって異なりますが、一般的には数日から数週間程度かかります。
シーリング工事
シーリング工事は、外壁の隙間や目地をシーリング材で埋め、防水性や気密性を高める工事です。経年劣化によってシーリング材がひび割れたり、剥がれたりした場合は、シーリング工事が必要となります。
シーリング工事の内容は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
工程 | 内容 |
---|---|
シーリン材の撤去 | 古いシーリング材を撤去します。 |
目地の清掃 | 撤去したシーリング材の跡や汚れをきれいに清掃します。 |
シーリング材の充填 | 新しいシーリング材を目地に充填します。 |
シーリング材には、シリコン系、ウレタン系、変成シリコン系などがあります。建物の材質や目地の状態によって、最適なシーリング材が異なります。
ビルの外壁防水工事
一般的に使用される「外壁の防水工事」という表現は、正確な工事区分ではありません。
これは、防水性能の高い塗料を使用した塗装工事や、劣化したシーリング材(コーキング)の打ち替えなど、外壁からの雨水浸入を防ぐための様々な工事を総称して使われている表現です。
実際の工事内容としては、
- モルタル外壁の補修やサイディングの張り替え
- 防水シートの交換
- シーリング材の打ち替え
- 防水性能の高い塗料による塗装
など、建物の外壁全体の防水性能を向上させるための総合的な改修工事が含まれます。
つまり、「外壁の防水工事」とは、単に防水性能の高い塗料を塗るだけでなく、建物の状態に応じて必要となる様々な補修や改修工事のことを言います。
ビルの外壁補修工事の流れ
ビルの外壁補修工事は、ビルの美観を保ち、耐久性を維持するために重要なメンテナンスです。しかし、初めて工事を行う際には、どのような手順で進めるべきか迷うこともあるでしょう。ここでは、ビル外壁補修工事の流れについて解説します。
step1|現状調査と補修内容の決定
まずは、専門業者による外壁調査を行い、どのような補修が必要かを判断します。
調査結果をもとに、補修内容や工法、スケジュール、費用などを決定します。
step2|足場設置と養生
補修箇所以外の汚れや破損を防ぐために、足場を設置し、養生を行います。
step3|外壁清掃
高圧洗浄機や薬品などを使用して、外壁に付着した汚れやカビなどを除去します。
step4|下地補修
ひび割れや剥離などの劣化部分を補修材で埋め、表面を平滑にします。
step5|塗装・タイル張り・シーリングなど
補修内容に応じて、塗装、タイル張り、シーリングなどの作業を行います。
step6|仕上げと検査
最後に、仕上げを行い、検査をして完了となります。
ビル外壁補修工事は、専門的な知識と技術が必要なため、信頼できる業者に依頼することが重要です。
また、事前に十分な準備を行い、スムーズな進行を心がけることで、ビルの美観と耐久性を維持することができます。
ビル外壁補修工事のコスト削減する方法
外壁補修工事は大規模な工事となるため、適切なコスト管理が重要です。
ただし、単純な価格比較だけでなく、工事品質や保証内容なども含めた総合的な判断が必要となります。ここでは、工事費用を適切に抑えながら、確実な補修工事を実現するためのポイントを解説します。
複数業者の見積もりを比較する
外壁補修工事は、業者によって見積り金額や工事内容に大きな差が出る可能性があります。適切な工事業者を選定するためには、最低でも3社以上の見積りを取得することをお勧めします。その際、以下の点に注意して比較検討を行いましょう。
工事内容の詳細確認
使用する材料の種類や品質、工事の範囲と施工方法について、詳細な説明を求めることが重要です。また、足場設置の有無と期間、産業廃棄物の処理方法、工期と作業時間帯なども、工事費用に大きく影響する要素となります。
実績と保証内容の確認
施工業者の信頼性を判断する上で、類似物件の施工実績や施工管理体制の確認は欠かせません。また、保証期間と保証内容、瑕疵保険の加入状況、建設業許可の有無なども重要な判断材料となります。実績豊富で信頼できる業者を選定することで、長期的なコスト削減につながります。
アフターフォローの確認
工事完了後のサポート体制も重要な検討項目です。定期点検の有無と頻度、緊急時の対応体制、補修時の対応方法など、継続的なメンテナンスに関する提案内容を確認します。また、相談窓口の設置やメンテナンス計画の提案など、長期的な維持管理体制も評価のポイントとなります。
複数の業者を比較することで、最適な業者を選択し、コスト削減につなげることができます。
ビル外壁補修工事のまとめ
ビル外壁は経年変化によって劣化が進みます。
塗装の剥がれ、ひび割れ、膨れなどのサインが見られたら、早急に補修を行う必要があります。
外壁は建物の美観を守るだけでなく、防水や断熱などの重要な役割も担っています。
劣化を放置すれば、雨漏りや構造材の腐朽を引き起こし、建物の安全性や資産価値を低下させてしまいます。 また、塗装の耐用年数が迫ってきたときにもメンテナンスが必要な時期です。
耐用年数を過ぎると塗装の防水機能が低下し、雨漏りなどの原因になります。 ビル外壁の補修方法はさまざまあります。建物の状況や劣化の状態に応じて最適な方法を選びましょう。主な補修方法は以下の通りです。
- 外壁洗浄: 汚れや埃などを除去して美観を回復させます。
- 外壁下地補修工事: ひび割れや膨れの補修などを行い、下地の状態を整えます。
- 外壁塗装の修繕: 塗装の剥がれや色褪せを補修します。
- 外壁タイル工事: タイルの剥がれや欠損を補修します。
- シーリング: 外壁の目地部分のコーキング材の補修や打ち替えを行います。
- 外壁防水工事: 単に防水性能の高い塗料を塗るだけでなく、建物の状態に応じて必要となる様々な補修や改修工事を行います。
ビル外壁の補修は建物の美観と機能を維持するための大切なメンテナンスです。劣化のサインを見逃さず適切な時期に補修を行いましょう。