マンションの大規模修繕とは?費用相場や周期、工事の流れを徹底解説!
マンションの大規模修繕を検討中のオーナーさんはいませんか?
初めて大規模修繕を行なう場合は特に、分からないことも多いですよね。
そこでこの記事では、マンションの大規模修繕工事について解説していきます。
費用相場や工事の周期、工事の流れなどについてもご紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
マンションの大規模修繕とは
大規模修繕とはマンションの外壁塗装や防水工事、館内設備の更新などを行なう、大規模な工事のこと。
15~16年に1度行なわれるのが一般的です。
外壁塗装やシーリング工事、屋上の防水工事、非常階段など鉄部の塗装などを行ないます。
大規模修繕を行なうことにより、以下のようなメリットが得られます。
・建物の見た目が良くなる
・安全に建物を使える
・雨漏りなどを防げる
・建物の寿命が延びる
・資産価値が向上する
・入居率が高まる
大規模修繕のタイミングに合わせて、場合によってはオートロックや宅配ボックスを設置するなど、設備をグレードアップさせる工事を行なったりもします。
大規模修繕の費用相場
1回目の大規模修繕工事の場合、1戸あたりの平均で100万円ほどの費用がかかります。
例えば50戸のマンションなら、5,000万円前後の費用がかかるでしょう。
コンサルティング費用が発生する場合もある
外部の設計コンサルタントに工事監理や建築診断などを依頼する場合は、コンサルティング費用も発生します。
いくらかかるかはコンサルティング会社によって異なりますが、数十戸のマンションでも数百万円程度の費用はかかるでしょう。
費用はどこからまかなうの?
大規模修繕の費用には、マンション住人から徴収した管理費や修繕積立金が使われます。
管理費の相場は15,000~20,000円ほど。
ただしタワーマンションはフィットネスジムなど共有施設が充実する傾向にあるので、管理費が20,000円を超えることも。
また国土交通省が発表した「平成30年度 マンション総合調査」によると、修繕積立金は以下のような金額になっています。
完成年 |
平均額 |
~平成元年(1989年) |
12,154円 |
~平成11年(1999年) |
13,447円 |
~平成21年(2009年) |
12,386円 |
~平成26年(2014年) |
9,846円 |
平成27年(2015年)以降 |
6,928円 |
築年数が浅いマンションほど、修繕積立金が安めの傾向にあります。
また次にように、マンションの戸数によっても修繕積立金の額が異なります。
総戸数 |
平均額 |
31~50戸 |
12,952円 |
51~75戸 |
10,581円 |
76~100戸 |
11,535円 |
101~150戸 |
10,775円 |
151~200戸 |
12,698円 |
301~500戸 |
14,496円 |
修繕積立金の額も、高層階のタワーマンションだと高めに設定されていますよ。
部位別の工事時期の目安
修繕を行なう時期は、鉄部や給排水ポンプなどの部位ごとによっても異なります。
部位や内容 |
工事時期(築年数) |
メンテナンス(鉄部) |
5年目 |
小修繕(鉄部や屋上、給排水ポンプなど) |
7~10年目 |
大規模修繕(1回目) |
15年目 |
メンテナンス(鉄部、屋上防水、機械式 駐車場、給排水ポンプなど) |
20年目 |
大規模修繕(2回目) |
25~30年目 |
メンテナンス(エレベーター、インター ホンの交換) |
25~30年目 |
大規模修繕(3回目) |
40年目 |
大規模修繕は、回を重ねるごとに工事内容が変わります。
1回目は外壁の修繕が中心、2回目になると建物内部の玄関ドアなどの修繕も必要になってきますよ。
大規模修繕の工事期間
大規模修繕工事には、50戸未満で3~4か月、50戸以上で4か月以上、100戸以上で半年以上の期間がかかるケースも多いです。
また計画開始から着工まで1~2年ほどはかかるでしょう。
工事中は作業員が敷地内に出入りしたり、洗濯物が干せない日があったりします。
かなりの長期間、大規模修繕に関わることになるので、マンション住人への配慮が大切です。
説明会を開催したりして、マンション住人の理解が得られるよう努めましょう。
大規模修繕の流れ
大規模修繕は、一般的には以下のような流れで行なわれます。
①管理組合の体制づくり
②パートナーの決定
③建物診断
④修繕計画
⑤施工会社の剪定
⑥総会決議
⑦工事説明会の開催
⑧工事
⑨竣工検査、引き渡し
①管理組合の体制づくり
まずは管理組合内の体制づくりから始めます。
理事会が主導するのか、大規模修繕のためだけに修繕委員会を設置するのか、といったことも決めます。
②パートナーの決定
大規模修繕を行なうには専門的な知識が欠かせません。
外部のパートナー(専門家)との契約が必要なので、事前にどんなパートナーに発注するのかを決めておきましょう。
パートナーに発注する方式は、以下のものが一般的です。
責任施工方式…管理組合と施工業者との間で契約を結ぶ
設計監理方式…施工業者とは別にコンサルタントとも契約する
③建物診断
パートナーが決まったあとは、建物の劣化状況を調査する「建物診断」を行ないます。
専門の調査員が、専門機器なども使って入念な調査をします。
④修繕計画
建物診断の内容を元に、具体的な修繕計画を立てます。
工事内容や予算、実施時期、どの箇所を優先して工事するか、といったことを決めていきます。
大規模修繕の予算が足りない場合は、「住民からの一時金(臨時のお金)の徴収」「金融機関からの融資」といったことも検討する必要があるかも知れません。
⑤施工会社の選定
実際に工事を行なう会社を選ぶ工程に移ります。
インターネットや専門誌などを使って施工会社を公募します。
書類選考で数社に絞り、その後は施工会社によるプレゼンテーションの場を設けます。
ヒアリングを通して施工実績や会社の経営状況、アフターフォローの内容などをチェックし、さまざまな側面から検討しましょう。
⑥総会決議
マンション内で総会を開き、工事の内容について組合員に報告します。
組合員の承認が得られれば、工事の発注ができるようになります。
場合によっては総会決議を行なう前の段階で、複数回の報告会を行なうこともあります。
⑦工事説明会の開催
工事が始まる1か月ほど前に工事説明会を行ない、組合員に工事内容や工事中の注意点などを説明します。
この時も、可能な限りマンション住人の理解が得られるように努めましょう。
⑧着工
いよいよ工事が始まります。
工事中もマンション住人とのコミュニケーションが大切です。
掲示板やチラシなどを使って工事の進捗を伝えたり、工事中の安全に関する注意喚起などを行なったりします。
⑨竣工検査、引き渡し
工事が終わったら足場を解体する前に、施工ミスがないかどうかをチェックする竣工検査が行なわれます。
問題がなければ引き渡しとなり、大規模修繕の完了です。
工事自体の流れは?
お次は、実際に行なわれる工事の流れについて解説していきます。
工事は以下のような流れで行なわれるのが一般的です。
①仮設工事
②下地補修工事
③タイル補修工事
④シーリング工事
⑤外壁塗装工事
⑥鉄部塗装工事
⑦防水工事
⑧その他の工事
⑨完成検査
⑩足場の解体~引き渡し
①仮設工事
まず始めに仮設工事が行なわれます。
仮設工事とは、マンションの周囲を足場で取り囲んだり、現場事務所を設置したりする工事のことを言います。
また足場の周囲には、塗料の飛散防止や工具などの落下防止のためのシートが張られます。
足場などは工事後に撤去してしまいますが、仮設工事は大規模修繕を行なう上で欠かせません。
②下地補修工事
次に外壁や天井などに生じている、ひび割れや傷を補修します。
丁寧に補修して下地を作っておくと、その上から施す塗装工事などの品質が高まります。
下地補修工事は、建物の寿命にも関わる大事な工程です。
③タイル補修工事
経年劣化により、外壁タイルが下地から浮いたり剥がれたりしている箇所を補修します。
タイルが浮いた箇所から雨水が侵入して外壁にダメージを与えたり、タイルが落下して下を歩く通行人にケガをさせたりする恐れがあるので、タイル補修工事は欠かせません。
タイル補修を行なうと、マンションの外観も良くなりますね。
④シーリング工事
外壁同士のつなぎ目やサッシ回りのシーリングは、劣化しやすい箇所です。
劣化してひび割れた隙間から雨水が侵入し、雨漏りが起こります。
シーリングを新しくすると建物の気密性が高まり、断熱効果も期待できるでしょう。
⑤外壁塗装工事
外壁塗装を行なうことにより、外観が新築当時のように綺麗になるだけでなく、風雨からマンションを守る機能が回復します。
古い塗膜の上から塗料を塗り重ねるケースもありますが、下地と塗料の付着力が弱い場合は、古い塗膜を除去してから新たに塗装し直します。
⑥鉄部塗装工事
外部の階段や手すりなどの鉄部は、サビが発生する箇所です。
サビがある場合はサンドペーパーやワイヤーブラシなどでサビを落とし、その上から塗装を施して再度のサビを防ぎます。
⑦防水工事
屋上やバルコニーなどに防水工事を施します。
防水層が劣化すると、雨漏りにより建物内部の劣化を引き起こします。
防水工事には「塗膜防水」や「シート防水」といったさまざまな種類があるので、予算や施工箇所に合わせて選びましょう。
⑧その他の工事
必要があれば、エントランスの改修工事や給排水管の更新なども行ないます。
バリアフリー化やオートロックの設置などを行なうケースもありますよ。
⑨完成検査
工事が完了したら、きちんと工事が行なわれたかを検査します。
足場を解体した後には検査ができないので、解体前に行なう必要があります。
⑩足場の解体~引き渡し
検査で問題がなかったら足場を解体します。
その後は施工業者から引き渡しが行なわれます。
施工業者には工事完了引渡書や使用材料リスト、工事写真帳などの書類を提出してもらいます。
これらの書類は引き渡し後にトラブルが発生したときに使うので、大切に保管しておきましょう。
これで大規模修繕工事の完了です。
引き渡し後も、通常は業者による定期点検が行なわれますよ。
大規模修繕で良くあるトラブルと対処法
ここでは大規模修繕で良くあるトラブルと、その対処法について解説していきます。
大規模修繕の準備が間に合わない
「なんとなく計画がまとまらず、いつの間にか半年後に大規模修繕が迫っていた」というケースもあります。
大規模修繕の前に1~2年ほどは準備期間が必要です。
無理に予定に合わせて大規模修繕を行なうよりも、1~3年ほど延期したほうが良い場合があります。
費用などが不透明なままで工事を行なったりすると、さまざまなトラブルが発生しかねません。
修繕委員会に大規模修繕に詳しい人がいない
修繕委員会に、大規模修繕に詳しい人がいないケースもあります。
実は修繕委員会は、専門的な知識を持つメンバーで構成する必要はありません。
さまざまな年齢や性別の人で構成したほうが、マンション住人みんなが満足できる大規模修繕になりやすいですよ。
予算が足りない
「修繕積立金が足りない」というケースも多いです。
この場合は、以下のような対策が考えられます。
・修繕積立金を値上げする
・一時金を徴収する
・金融機関から借入れをする
・最低限必要な工事だけに絞る
・工事を延期する
ただし工事の延期を繰り返すと建物の劣化が進みすぎ、想定よりも修繕費用が高くなる可能性があります。
予算や建物の状況を考えながら、総合的に判断することが大切です。
マンションの大規模修繕まとめ
最後に、今回の記事の内容を簡単にまとめていきます。
・大規模修繕は15~16年に1度行なわれるのが一般的
・大規模修繕で建物の寿命が延び、資産価値も高まる
・1戸あたり100万円前後の費用がかかる
・費用は管理費や修繕積立金でまかなわれる
・鉄部などの部位ごとに工事時期が異なる
・工事期間は50戸未満で3~4か月、50戸以上で4か月以上
・工事以外にもパートナーの選定や修繕計画など、さまざまな工程がある
・着工の1~2年前には、準備を始める
・必ずしも専門家が修繕委員会にいる必要はない
・予算が足りない場合は一時金の徴収や借り入れ、工事内容の見直しなどが必要
大規模修繕を行なう前にさまざまな知識を仕入れておくと、トラブルを回避しやすくなりますよ。
工事期間は数か月にわたるので、マンション住人や近隣住民とのコミュニケーションもしっかり行ないましょう。
今回の記事を参考に、ぜひ大規模修繕について検討してみてくださいね。